Sports

May 2016
Interview 02

こんなに身近で、楽しまないのはもったいない

裏はすぐ山、そう思ったら行きたくなる

カフェ+自転車店「Scone&Bicycle」冨田 功さん、ハイキング用品店「白馬堂」浅野晴良さん、自転車店「Galleria2001」内田晃央さん

神戸の人々にとって、山は気負って行くところでなく、朝コーヒーを山頂で飲みたくなって登るような気軽な存在だ。また六甲山は国立公園に指定されているので管理も良く行き届いている。ここはみんなのパブリックスペース。山歩き、マウンテンバイク、ロッククライミング、キャンプ……、さあ、あなたは六甲山へ何しに出かけますか?

家族が起きてくる前に、ひとっ走り

— 冨田さんはスコーン専門店と自転車店を複合させたお店「Scone&Bicycle SPARK」を経営、週末は六甲山でのマウンテンバイクツアーのイベントも行われていますが、昔から山によく自転車で行かれていたのですか? 

冨田

20代の頃にも一度マウンテンバイクにはまっていた時期がありましたが、今のお店をオープンする少し前に現在の家の辺りに引っ越してきて、裏はすぐ山、そう思ったらまた乗りたくなって。子どもと休みの日に山登りをしていても、自転車のタイヤの跡が残っているのを見ると「ここ、マウンテンバイク、走ってるんだ」。その跡ばっかり見てしまって(笑)

子どもが小さくてまだ妻が子育てを大変そうにしている最中も、どうしてもマウンテンバイクで上りたくて、家族がまだ寝ている早朝にそっと寝床を脱け出し景色のいいところまで上がっていって、そこでお湯を沸かして朝日見ながらコーヒー飲んで帰ってくるのが習慣だったんですね。そして帰りに朝のパン買って帰って、みんなを起こして朝ごはん食べて。子どもを保育園に送って行って、それから仕事に行ってました。

— ご家族みんなで自転車にかなり乗られるんですよね。昨年、奥さんと息子さんと、3人でカナダからアメリカまで自転車で横断されたと聞きました。

冨田

ちょうど妻がバイクパッキング(※1)にはまり始めていて、テントや寝袋など自転車に積んで旅がしてみたかったし、もう2、3年したら子どもが受験なので行きにくくなると思ったのです。カナダのバンクーバーからアメリカのシアトルまでまず走って。シアトルからは自転車を乗せられる電車に乗ってポートランドまで行って、ポートランド市内でまた自転車を楽しんでから飛行機で帰ってきました。トータルで300kmくらいですかね。 (※1)バイクパッキング…バッグで荷物を携行するのではなく自転車に直接くくりつけて旅をするスタイルのこと。 

— 息子さんは中学1年生でしたよね。山へも自転車でよく一緒に行くんですか。

冨田

うちの店では毎週日曜は「裏山会」といって、お客さんと一緒に山に行っているのですが、息子もそれに来ています。家族のいる人が多いから朝早くに上って、昼前に解散。午後からはみなさん家族サービス(笑)。軽く走って、たわいもない会話をして、ヒューッと降りるだけでも十分楽しいので。

— 現在のカフェ「Scone & Bicycle SPARK」はどういうきっかけで始めたのですか。

冨田

今のお店を始める少し前は、三宮でカフェやレストランバーを経営していました。ただ、夜の営業に段々疲れてしまって。それで今の場所に移ってきてマイペースでやろうと。奥さんがもともとイギリス好きでスコーンを昔から作っていたので、スコーン専門店にしようということになったのですが、妻が「自転車もやったらええやん」と。それでスコーンと自転車販売の店になったんです。

山を歩いて地図をつくる人

— 浅野さんは普段は六甲駅そばのショップ「白馬堂Rokko」のオーナーとして、ハイキングウェア&グッズの販売や山のガイドの仕事をされています。もともとお祖父さんから引き継がれたお店なんですよね。

浅野

ええ、そうなんです。

— それと、お店の経営以外に、六甲山の「踏査」というお仕事もされていると聞いたのですが、それはどういうお仕事ですか?

浅野

山を実際に歩いてハイキングコースのルートを地図に書き込むという仕事で、その調査データが『山と高原地図(昭文社)』という地図に毎年更新で反映されています。全国のシリーズがあるのですが、僕はその中の六甲山担当なのです。

以前六甲山は2人で担当していたのですが、僕の師匠が引退してしまい今は僕だけで行っています。

— 六甲山のハイキングロードについては知り尽くしていらっしゃるということですか。

浅野

いやいや、まだ知らない道がありますよ。現在の地図でも既にたくさんのルートが掲載されていますが、実際にはそこに書いてない道があと3倍くらいあると思います。六甲山は国立公園なのに誰かが勝手に道をつくってルートが増えていたりするんです……勝手にさわっちゃダメなんですけどね。

— とてもやりがいのあるお仕事ですよね。

浅野

娘は「お父さん何の仕事してるん?」と友達から聞かれると、「地図つくってる人」って答えています(笑)。

この地図づくり自体が、山を好きな仲間とつながるコミュニケーションツールになっているところもありますし、ライフワークとして続けていければいい。ただ、いろんな方と情報を共有させてもらったりしているので、これはみんなで行っている共同作業だなと。また、引き継いでくれる人も育てていかないといけないと思っています。

実は自転車の楽しみがいっぱいの神戸

— 内田さんは三宮で「Galleria2001」というサイクルショップを経営されていますが、主にどんな自転車を取り扱われていらっしゃいますか。

内田

うちのお店はどちらかと言えばロードバイクに乗るお客さんが多いです。冬場はシクロクロス(※2)の競技があるので、それ用の自転車も力を入れています。 (※2)シクロクロス…ヨーロッパで盛んなオフロードで行われる自転車競技。またはその競技のための自転車の車種。最近はマウンテンバイクではなく、シクロクロス用の自転車で山を走る人も増えている。

— 神戸は山だけでなく、海側の平地を走っても気持ちいいし、そういう自転車の楽しみもありますよね。

内田

そうですね、海沿いや人工島を走ったりするのもできますし。あるいは船に自転車を乗せてそのまま島に上陸して走ったり。三宮から高松も小豆島も気軽に行けるし、淡路島にも行けます。船を使えば本当に車の少ないところを走れます。六甲山を超えて走るのも、車が少なくて良いです。

— イメージ的に言うと、神戸は坂の町ということで、やや自転車が敬遠されている向きもありますが、実は自転車で遊ぶレパートリーがあるとも言えるのですね。

内田

たとえばロードバイクだと、一人で速く走りたかったり、ストイックにトレーニングしたいという人も少なくない。一方で、山でマウンテンバイクなら、夫婦で遊びやすかったりしますよね。

常に良い状態が保たれている山

— 改めて、他の山と比較して、六甲山ならではの良さや楽しみ方はどんなところでしょう。

内田

やっぱり身近であるということ。街からすぐにアクセスできるところがまず何よりも魅力だと思いますね。

浅野

「海」ですかね。意外に、山に登ってどこからでも海が見えるというのは貴重なんじゃないかと。

冨田

六甲山系って横に長いから地形のバリエーションがすごく豊か。だからいろんな楽しみ方が出来る。またこんな風にマウンテンバイクで走りやすい山も、実は意外に少ないんですね。

たとえば他の山では、私有地で許可をとらないと走れなかったり、そうでなくても、整備がされていなくて道が荒れ果てていることも多い。けれども、六甲山は国立公園ですから管理されていて、常に良い状態がキープされているから走りやすい。そこがとてもいいなと思います。