Sports

May 2016
Interview 01

始業前に山に登る生活

6時から山に登って9時には出社します

株式会社アシックス グローバルフットウェアプロダクト・マーチャンダイジング統括部デザイン部 パフォーマンスランニングデザインチーム 木暮孝行さん

市街地の北側には六甲山系の山々が連なり、住宅地からも気軽に山に登ることができる神戸は、山のスポーツをするには持ってこいだ。南側は海があり港沿いをランニングするのが気持ちいい。 日本随一のスポーツ用品メーカー「アシックス」は神戸が発祥であり、本社も研究施設も神戸に置かれている。そして同社の売上は2015年、海外比率が7割を超えている。米ナイキや独アディダスに次ぐ、世界第3位の座が射程圏内とも言われている。 そんなアシックスの雇用を通じて、他県から神戸に移り住んだという人も多い。

海山好きにはたまらない環境

— アシックスには入社されてもうどのくらいなんですか?

木暮

新卒入社のときからなので3年になりますね。

— もともとご出身は。

木暮

僕は群馬県出身で、大学は東京だったのですが、就職でこちらに来ました。大学ではデザインを勉強していましたが、小学校の時から陸上競技をやっていたこともあり、ずっと希望していた会社だったのです。

ただ、生まれてこのかた関西で暮らしたことはなかったのでちょっと不安はあったんですが、今はむしろこちらの環境を十二分に満喫していますね。

— たとえばどんなところを?

木暮

昔から海山が好きで、関東に居たときも神奈川の海などによく行っていました。神戸に来てみたら、まさに海と山に挟まれてその間に街があるような場所で、上れば山、降りれば海に行けるので贅沢だなと。

山は今僕が活動しているトレイルランニング(※1)だったり、海は、趣味が釣りなので海釣りに行ったりしていますね。 (※1)トレイルランニング…森や山中、自然公園などの未舗装の道を走るスポーツ。

— トレイルランニングは長くされているんですか?

木暮

いえ、走ることはずっとしていたのですが、その楽しみは会社に入ってから知りました。そして、言うまでもなく神戸は六甲山系がすぐ近くにあって、山岳競技には持ってこいの場所だったので、もうすっかり虜になってしまったのです。

出社前にトレイルランニング

写真提供=木暮孝行さん

— トレイルランは、普段どんなコースを走っているんですか?

木暮

現在は須磨区の板宿というところに住んでいるのですが、街の中から北に向かってまっすぐ行くと、須磨アルプスの「馬の背」という、風化したような岩場がありまして、そこに登って海を見下ろすと景色が本当にきれいなんです。出社前、6時くらいに起床して登って、山頂で座禅したり、ボーッと日の出を見たりしてから下山しています。中には走行禁止区間もあるのでトレイルランナーとしての山でのマナーは常に心がけています。

— 出社前に行って帰ってこれるくらいなんですか。

木暮

片道20分程度で行けますから、山頂で過ごす時間も含めて往き帰りで1時間以内には収まります。6時くらいに家を出発して山に登り、一度家に帰ってシャワーを浴びて、ご飯を食べて。うちの部署はフレックスタイム制を採用しているのですが、9時から10時くらいの間に出社しています。

— 6時から山に登って9時には会社に着けるというのは神戸の街のコンパクトなところがよく表れていますね。

木暮

そうですね。頑張れば、自宅のある須磨からポートアイランドにあるアシックス本社まで走って行けてしまいますしね。事実、東京で行われている山岳レースの大会に毎年出ているのですが、大会が近くなるとトレーニングを兼ねて会社から自宅まで走って帰ります。11kmくらいなのでちょうどいい練習になるんですよ。

六甲山は最高のトレーニングスポット

— 山岳レースということは当然、六甲山でもトレーニングされるわけですね。

木暮

はい。六甲山はどこを登るかによっても全然地形が違うので、練習のバリエーションを組むのに困らないんですよ。しかも東京だったら奥多摩など、まずトレーニングのスタート地点まで行くのに時間がかかってしまいますが、こちらだと自宅の近くからすぐ山に入れますから。

— 六甲全山縦走もしますか?(※2)

木暮

しますね。今日は縦走するぞ、と決めてメニューを組んだ日は、たとえば朝、垂水区の塩屋から北区の有馬温泉まで走って折り返してくるとか。だいたい片道40キロくらいでしょうか。 (※2)六甲全山縦走……六甲山系の西端・須磨区から東端の宝塚に至る、公称56kmに及ぶ六甲全山縦走路。神戸市発行の「六甲全山縦走マップ」もある(「六甲全山縦走大会」事務局/平成26年6月より改訂版を発売/1部400円)。

写真提供=木暮孝行さん

社員でランニングのグループをつくって楽しむ

— 同じアシックスの社員さん同士で走ったりもされるんですか。

木暮

しますよ。同期入社の仲間でランニンググループをつくって、休日や会社の終わった後、夜や昼休みにも一緒に走りにいったりしています。先輩社員の方もまた違うランニンググループを運営していてそこに参加させてもらったりと、いろんなものがあります。

— では一緒に山登りも?

木暮

入社したての頃、会社になかなか馴染めなかったりということがありますよね。そういうときこそ週末に仲間と山に行って、日常を一旦遮断すると良いんです。山頂からアシックス本社のあるポートアイランドを眺めると、粒みたいに見える。距離を引いて見ることで、日常がすごくちっぽけに思える。これは、ポジティブな意味での現実逃避です(笑)。

写真提供=木暮孝行さん

仕事でも山に行く

— 木暮さんはトレイルランニング用シューズのデザインをされているとのことですが、神戸の環境はお仕事に対しても、良いフィードバックが得られそうですね。

木暮

シューズを開発・デザインするにあたっても山に行きます。「フィールドテスト」と言って、六甲山で試し履きをする。そこで試験したデータをまとめて、動画に録って実際の使用感をレポートしたりしています。

最近はシューズのデザインをするにあたっても、デザイナー自身も外に出て、お客様のデータを積極的に取りに行って、その中から次に消費者が欲しいものは何か、という潜在ニーズを探っていく。そういう開発手法が増えています。

ですから私自身、この山を一競技者としても楽しんでいるのは仕事にも還元されていると思っています。というか、取材していても自然と走りたくなってしまうというのが本音です(笑)

URL
アシックス ホームページ

取材・執筆=安田洋平 撮影=藤田 育 収録=ポートアイランド/「アシックス」世界本社オフィスにて 2016年2月1日