Sports

May 2018
Column

神戸の環境を活かしたスポーツビジネス

小さくでも始めることが大事

早速、ヒントを実行に移す

神戸という都市の環境を活かしたビジネスの起業の可能性を探る目的で行われた2日間の集中講義による「KOBE live+work マイクロビジネススクール」。 第2回は「アウトドアフィットネス」を切り口にしたスポーツビジネスの起業について取り上げた。神戸ならではの海と山と都会が近い地理的特徴や豊かな自然環境を活かしたスポーツビジネスの可能性に触れながら、参加者たちに向けて2020東京オリンピックが近づいていることや高齢化の進む社会状況の中、健康・スポーツコンテンツのポテンシャルの高さを説かれ、「小さくでも始めることが大事。動き出しましょう」と締めくくられたのが印象的だった。

その後、参加者たちはどうしているのか――。そのもとを訪れ近況を聞くことにした。

キース・スティルマンさん。アメリカ出身だが学生の頃日本に留学、その後スポーツジムなどで働いた後、2年ほど前に神戸に夫婦で移住し、数ヶ月前から灘区・春日野道駅近くの高架下空間でクロスフィットのジムを始めた。

日本ではまだそれほど認知度が高くないものの、アメリカを始め海外ではここ数年かなり人気の高まっているクロスフィット・トレーニング。特徴的なのが日常生活の中で使う動作を基本にしながら、そこにトレーニング要素を入れ高い強度で行い、また毎回内容が違って変化が加えられている点だ。ハードにスポーツをするアスリート向けに調整することもできれば、健康寿命を延ばすことを目的とした体づくりに最適化することもでき、年齢も若者からお年寄りまで取り組める。今はキッズや、妊婦・産後の女性などにも参加してもらえる態勢を整えているところだという。

日常動作を活かしたトレーニングという考え方の延長上で、室内にとどまらず屋外での活動をこれまでも取り入れていた。神戸の自然環境を活かしてハイキングを取り入れたり。今年は布引の山や、芦屋のロックガーデンに生徒と一緒に出かけることを考えている。須磨のビーチでも何かできないかと下調べをしているところだ。

「スクールには自分たちが行っている事業の方向性の正しさの再確認ができればと思って参加したが、講師の方と考えていることが近くて自信が持てた。なおかつ、広めていくためにできる工夫・手法の点で極めて具体的なヒントが多かった」。たとえばSNSによる広報に力を入れ始めたのもそのひとつ。クロスフィットについて知る・学ぶための情報源は圧倒的に英語中心で日本語に訳されているものが少ない。そこでメンバーからわからない・悩んでいると聞くことの多いトレーニングの仕方などを1分未満の動画にして日本語・英語の両方で配信を始めたが、非常に好評という。

また単にトレーニングを教える/教えられるだけの関係より「コミュニティーをつくる/ファミリーのような関係になる」ことを以前から大事にしてきた。ジムに併設されたラウンジで会員とその家族友人を集めての持ち寄りパーティーを行ったり。朝早くのクラスの参加者はジムでトレーニングした後、ラウンジで朝食、出社までそのまま読書をしたりして時間を過ごす人もいる。ハイキングなどアウトドアでのプログラムも、トレーニングと言いながら楽しく親睦を深める機会でもある。

今取り入れたいと強く思っているのは、ファーマーズマーケットの野菜を使ったフードを会員に向けて提供できたらということだ。「EAT LOCAL KOBEがあるのは私たちにとってとてもアドバンテージだと思う。健康的な野菜が手軽に得られる良さがあるので、さらに私たちはそこに、体に入れるものがどういう影響を与えるのかなど、栄養学的なアドバイスも情報として付加しながら提供することを行ってみたいです」

スポーツイベントのための拠点を提供

神戸市北区山田町でオーダーメイドの家具製作工房兼ショップを営む佐々木拓也さんも受講したひとり。なぜ家具の製作者が?と思うかもしれないが、工房の前の敷地が広大かつ回りはずっと山。この場所の広さと気持ち良さを活かして、スポーツをする人たちの拠点として何かに活用してもらうことができるんじゃないか。佐々木さんの場合は、スポーツビジネス自体から収益を望んでいるわけではないが、場づくりが人脈づくりとなり、結果的に本業である家具の注文に返ってくるのではないか、と考えヒントを求めて受講した。

既にこの場所でヨガのイベントをしたいという問い合わせがあって先日場所を貸したばかり。そのときは昼間の開催だったがイベントの主催者に意欲が湧いて、この次は夜、星空ヨガにチャレンジしてみたいと話しているという。

また、マイクロビジネススクールの際に、この場所まで車でやってきてここから自転車に乗り換える基地にしてはどうかというアイデアをもらった。事実、佐々木さんは自宅からマウンテンバイクに乗って工房まで来ることも多いが、道中は山のハイキングコースを走って、池の辺を行き、神社の横を通って……、それ自体が里山自転車ツアーのコースになりそう。「この辺りで自転車に乗っていると小学生のときのようなワクワク感が得られるんです」。自転車ツアーから帰ってきた後バーベキューをしたりと「居場所」としても佐々木さんの工房の庭は最高だ。北区は野菜や米などの産地でもあり、美味しい食材にも恵まれている。

受講者同士の交流が仕事につながった

ところで佐々木さん、実は早速スクールへの参加が家具づくりの仕事につながっているという。しかも注文主は同じスクールに参加していた小谷さんだ。小谷さんはもともと スポーツジムのトレーナーだったが、娘さんの出産を機に勤め先を辞めて子育てをするかたわら、自宅で教えられる範囲でパーソナルトレーナーとして知人に教えることをしていた。起業は頭の片隅で思い描く程度だったが「小さくでも始めてみることが大事」という、冒頭で紹介した講師のコメントに背中を押されるように、また偶然スクールの直後に家の近くで手頃な物件が見つかったことからそのまま契約。もう前に進むより他ないと、気づけばスクールから3か月、ピラティスを中心としたマンツーマントレーニングのジムをオープンさせた。

そして何とそのジムで使う家具を依頼されたのが佐々木さんだったのだ。「ネットワークをつくることから仕事につながらないかと考えたわけですが、まずその手がかりを得るために参加したスクールで知り合った人の縁で早速こういう展開が起きて嬉しい。2018年最初の家具納入の仕事でした」

実は他にも須磨区から参加されていた方も物件探しにその後すぐ動いていたりと、皆さんからアクションの報告が受けられて嬉しい驚きを得ている。その上、実は講師として神奈川県の葉山から来てくれた黒野崇さん自身が神戸の街の環境が持つポテンシャルを気に入って、早速この地でアウトドアフィットネスのジムを、オープンさせてしまった。まさに「まずは動こう。始めてしまおう」が一気に体現されたかたちだ。それぞれに、今後の展開が楽しみだ。