Sports

Jan 2018
Column

「スポーツビジネスをはじめよう!」

KOBE live+work マイクロビジネススクール 第2回

神戸の街が持つスポーツビジネスの可能性

「神戸の街の特徴を生かしたマイクロビジネスの起業」を探る試み、マイクロビジネススクール。第1回の「アーバンワイナリーを始めよう!」に続く第2弾「スポーツビジネスをはじめよう!」の講座が、9/30、10/1の2日間で開催された。

山と海が近い神戸にはたくさんのアウトドアスポーツのフィールドがあって、こうした環境を活かしたスポーツビジネスのポテンシャルがあるとの考えから選ばれたテーマだ。

今回講師に招いたのは株式会社BEACH TOWN代表・黒野崇さん。ヨガ、トレイルランニング、サーフィン、SUP(※)などのメニューを組み合わせつつ、自然を感じながらの健康づくりを提供する“アウトドアフィットネス”を提唱するクラブ「BEACH 葉山」を2007年に立ち上げた。現在では同様の施設を20以上、日本全国でプロデュース・運営を受託している。

※スタンドアップパドル(Stand Up Paddle)の略称。サーフボードの上に立ってパドルを使い海の上などで漕いで遊ぶスポーツ。近年世界中で人気が高まっている。

「神戸という街にはずっと注目していたので今回のスクールをきっかけに自分にとっても良い出会いの場にできたらと思いますし、皆さんと同じく、私も何か小さくでもこの場所で始められたらという気持ちです。可能性がたくさん発見できる2日間にできたらと思っています。よろしくお願いします」

具体的なヒントを求める受講者たち

「須磨で生まれ育ち40歳を過ぎてトライアスロンなど始めました。SUPもよく行っています。須磨はアウトドアスポーツをするのに環境的な良さがありながら、素材を活かせていない気がしています。地元で何かアクションを起こしたいと思っています」。「アメリカ出身ですが大学から日本に留学した後、現在のボスに誘われて神戸でクロスフィットジムを始めることになりました。今、オープン4か月になりますが、今行っていることを神戸で広めるためのヒントが欲しくて来ました」「フィットネスの専門学校を出てトレーナーとして働いていましたが、子どもが生まれて、現在は子育ての合間に自宅でパーソナルトレーニングのプログラムを行っています。子どもの成長に合わせて本格的に独立起業がしたいので今日は学びにきました」など、具体的な目標・志を持った方たちが加古川、大阪等からこのスクールに集まった。 

地域活性化にも寄与

まず数時間にわたって黒野さんのレクチャーが行われた。もう10年にわたって新しいフィットネスの文化を実践してきた人だからこそ語ることのできる哲学や豊富な事例経験、コンテンツの編集力、的確なマーケット分析など、実践的かつ深い話が続いた。聞き漏らすまいと参加者たちもみな集中した表情。

以下、記者自身が取ったメモより。

「アウトドアフィットネスは健康維持や未病対策という従来的なフィットネスの効果に加えて、自然環境保全や遊休地対策、地域コミュニティーの活性化などにも関わっています。地域の自然資源を利用し、使われていなかった施設を活用し、地域に人の集まりをつくり出すきっかけにもなる」

「アウトドアフィットネスを通じてその土地固有の環境や人への愛着が湧き、親しい仲間もできる。家とも仕事場とも違う『第3の居場所』を生み出す。『引っ越そうかな』という気持ちにもなり、結果的に移住促進的な効果も持つ」

「近年、公園の活用についての自治体からの相談が増えている。また設置管理許可制度(※)ができたことで公園の管理や活用に民間企業がコミットするケースが増えている。そこで民間に求められる提案でも、スポーツ・健康というコンテンツへの要望が高まっている」

※都市公園法第5条の規定より、申請に基づき市が許可を与えることにより、都市公園内において、公園管理者以外の者が、都市公園の機能増進等を目的に、公園施設(売店・飲食店等の便益施設を含む)を設置または管理することができる制度。

「アウトドアフィットネスの起業メリット。『大型の設備投資が要らない』『立地も駅前でなくて良い。路線価が低く賃料が安いところで始められる』。『損益分岐点が低く、黒字化するハードルが高くない』」

「私がアウトドアフィットネスを開業した2007年の頃には見られた印象的な出来事。ひとつは女性ライフスタイル誌などで『忙しい日常の中、自然に接し体を動かしながら本来の自分を取り戻す』といったフレーズが多く使われるようになったこと。

もうひとつはスマートフォンが発売されたこと。そこから一気に社会における情報化のスピードが加速していった。しかし、不思議とデジタルが進めば進むほど、自然に触れたり人のつながりを持ちたいという人間の欲望が強くなる。 そしてそうした気持ち・ニーズはますます強まっている」 

親睦を深める/一緒に山に登る

1日目の最後は各参加者から質問が飛び、それに黒野さんが答える形で終わった。「月会費でお客さんが払える値段の最低金額また上限金額は実感としていくらくらいですか?」「山でトレイルラン、海でSUPなどを神戸でのアウトドアフィットネスとして取り入れるとして、コンテンツ間の距離感の限度はどれくらい?」など。そしてその流れで懇親会へみんなで出かけた。

翌日は朝8時に集合。一緒に裏山に入り軽くトレッキング。途中の茶屋で朝食を共にするところからスタートした。そして下山後は本格的にスポーツビジネスのビジネスプラン・シートを午前中いっぱいかけて各自作成。そして昼食を挟んで、午後一番からひとりずつプレゼン、その場で黒野さんからの講評を受けることとなった。

実践的なレビュー「小さくでも始めること」

講評も極めて具体的で、受講者ごとに直接的な改善点やすぐに取り入れられるアイデアが示された。「クロスフィットのブランディングなら、ポイントはいかに『黙々と』でなく『楽しく』トレーニングして追い込んでいくというイメージを見せられるかでは。まず外国人のグループで楽しく取り組んでいる雰囲気をつくって、それによって日本人にも意識させるようにしていっては」「スポーツビジネスのプロモーションではFacebookにはこだわらなくても良いが、インスタグラムは絶対にやった方が良いでしょう」「ビジターの方の値段をもう少し上げないと。会員の値段との釣り合いが取れないでしょう」「ヨガと組み合わせるアウトドアのプログラムはランよりもむしろ『ノルディック・ウォーキング』(※)を選んだ方が効果的ではないでしょうか?」

※2本のポールを使って歩行運動を補助し、運動効果をより増強するフィットネスエクササイズ。もともとはクロスカントリーの選手が夏場のトレーニングとして山野を歩いたのが始まり。

こうして凝縮した2日間は終了。最後、黒野さんからの挨拶。「2日間を終えて、『何よりも始めることが大事』であるということを一番にお伝えしたいです。2020年東京オリンピックを3年後に控えて、社会の中で『健康・スポーツ』のコンテンツが求められる機会が増えてきています。

皆さんの事業単体で考えてもきちんと設計すれば収支は回ると思いますし、加えて、現在の社会状況の中、特徴的なスポーツビジネスの活動を続けている人にはいろんなところから声が掛かったり相談されたりという可能性も十分あり得ると思います。

また最近では「CCRC」といった取り組みがあるのを皆さんご存知でしょうか。Continuing Care Retirement Community。高齢者が健康に暮らすことができ、医療や介護の面でもケアが手厚い街づくりの進む街づくりを進めて、リタイアした世代の地方移住を促進しようとする取り組みのことです。アメリカから始まり、昨今日本でもその模索が始まっています。こうした動きの中でもまた、みなさんのやっていることがつながっていくチャンスは少なくないと思います。

いろんな出会いが待っていると思うので、小さなところからでもぜひ思い切って始めてください!」

参加者の感想(抜粋)

・具体的なことをたくさん聞けたのが良かった。どこから始めて良いかわからない、ではなく、必要なポイントがわかったので、実際に動けると思った。個人的には神戸三宮の「みなとのもり公園」を使って、今やっているジムのプログラムに、アウトドアフィットネスの要素を取り入れられたらと思っています

・来る前は、自分の中でかなりざっくりとしたプランだったが、この2日間でかなり詰めることができ、前進した。「小さくでも始めること」という言葉がガツンと来た。まず1歩を踏み出してみようと思う。

・自分の中では須磨はスポーツビジネスのポテンシャルが高いと思い続けていたが、いろんな切り口を教えてもらうことができ、どういう形を与えていけば良いかがわかってきた気がする。具体的な提案ができれば土地の人々の見方も変わって、新たなカルチャーが生まれるだろうし、本腰を入れて取り組んでみたい。

取材・執筆=安田洋平 撮影=則直建都(※7点目並びに8点目の組み写真は異なる。株式会社BEACH TOWNより提供) 取材日=2017年9月30日・10月1日