Nomads

Dec 2016
Column

国際色豊かな神戸の学校事情

多様な価値観が根づいている

神戸はよく異国の雰囲気と言われるが、それは外国人の数がただ多いからというより、居住歴の長い外国人が多いということに由来するだろう。神戸の人々に多国籍な暮らしが根づいていることは教育機関の状況にもよく表れている。

まず、外国人学校の多さ。兵庫県内では12校あるが、そのうち8校が神戸市内にある。約2,800人の児童生徒が在籍し、なおかつ創立年が古く100年以上の歴史を持つ学校も少なくない。

その代表格が六甲アイランドにある「カネディアン・アカデミィ」。幼稚園から高等学部まであり600名近くが通う、神戸を代表するインターナショナル・スクールだ。さらにそこから歩いて数分のところには、「神戸ドイツ学院」もある。こちらも100年以上の歴史を持つ伝統校で、2歳から16歳までを教えている。六甲アイランドに居住する外国人ファミリーが多いのはこうした学校事情によるものだ。

六甲アイランドと並んで外国人学校が多いのが、北野異人館のある中央区の山側。まず英国系の「聖ミカエル国際学校」で、3歳~11歳までが通う創立70年の学校。中国系の子どもが多く通うのは「神戸中華同文学校」で、こちらの校史は110年以上にも及ぶ。

他に、須磨区にある「マリスト・ブラザース・インターナショナル・スクール」。また朝鮮学校は3校あり、長田区に「西神戸朝鮮初級学校」、中央区に「神戸朝鮮初中級学校」、垂水区に「神戸朝鮮高級学校」がある。

公立小学校も国際的

こうした外国人学校に通う子どもも多い神戸であるが、一方で、公立であっても多国籍な雰囲気を持つ学校も少なくない。

中でもよく知られているのが神戸市中央区中山手にある「こうべ小学校」だろう。こちらは校区も広く、北は外国人が昔から多く住む北野町から、南は三宮〜南京町のある元町~海岸沿い辺りまでを含む。さまざまな地域の子どもがいて、さらに国籍も多様。でも、どの子もランドセルを背負って同じように通ってくる。

学校の実際の様子について、今回「こうべ小学校」の細川佳宏校長に話を伺うことができたのでご紹介。

— いろいろな国の人が暮らす神戸の中でも、とりわけ国際色が豊かな小学校として名前の挙がることが多い「こうべ小学校」ですが、全校生徒のうちどれくらい外国人の児童がいますか?

校長先生

純粋に外国籍の子どもということでいえば、全校生徒7百数十名のうち30名程度と、それほど多いわけでもないんです。けれども、外国にルーツを持つ子どもも含めると100名近くになりますね。(※取材時点の数字です)

— 外国にルーツを持つ子どもが全体の14%程度に上るということですね。ただ先ほど登校風景を見せてもらいましたが、自然に溶け込んでいるという印象を受けました。

校長先生

そうでしょうね。みんなと同じ学校生活を送り、完全に馴染んでいますからね。ただよく見ると髪の毛の色や瞳の色が違う子もいるんですよ。

— 比率でいえば、どういう国の子どもが多いのですか。

校長先生

昔はアメリカやヨーロッパの子たちの数がもっと多かったと聞いていますが、今はフィリピンや中国など、アジア系の子どもたちが増えています。

— 神戸の公立小学校の中でもこちらの学校が国際性で際立っているのはどうしてなのでしょうか。

校長先生

他の学校でも神戸は外国にルーツを持つ児童は割と多い方だと思いますが、確かにここの校区は特別です。外国人の働き口が身近にあって、地域の中に自然に受け入れられ、外国人のコミュニティーも確立されているということから、親御さんたちに安心感があるのだと思います。

— 実際、この辺りはちょっと歩くだけでも外国人に普通に会いますね。

校長先生

そう。この校区では昔から外国人がたくさん住んでいるので日本人の住民にとっても日常の中に外国人がいることが自然なのだと思います。わざわざうちの校区を選んで引っ越して来られるご家族もいらっしゃいます。

— すぐ近所にインターナショナル・スクールもあるわけですが、公立のこうべ小学校を選ぶ外国人の家庭もいらっしゃるわけですね。

校長先生

そうですね。この地域は昔からこうなので、受け入れる私たちにとっても自然な流れになっています。ただ公立ですから、学校側としては国籍やルーツ、家庭環境に関係なく地域の子どもたちは同じように通ってこれるような存在でありたいと考えています。

— そうした国際的な状況ですと、宗教などの理由から特定の子には特別な配慮をするといったこともあるのでしょうか?

校長先生

公立の小学校なので基本は“みんなで一緒に同じように学ぶ”であり、児童によって授業の仕方を変えたりといったことは基本的にしていません。

ただ、中には日本に来てまだ日が浅く日本語がしゃべれない子もいますから、そういう子のために、国語の時間になると別の教室に集めて日本語のレッスンをする「国際教室」というクラスはあります。

— 他には?

校長先生

その他は特段、異なる扱いをするということはないですね。食事について、入学時に親御さんから、宗教的な理由から食べられないものがあるので給食ではなくお弁当にさせてください、とご相談をされ、毎日お弁当を持ってきている子どもも中にはいます。でもそうした宗教的な理由でなくても、アレルギーが原因で同じようにお弁当を持ってくる子もいますので、シンプルに子どもの様子に合わせて対応していこうという姿勢で接しています。

私が以前赴任していた小学校では、決まった時間にお祈りをしなければいけない子や、服装面での制限がある子もいましたが、今のところ本校ではないですね。もし親御さんからそういう要望があれば、対応を考える必要も出てくるでしょう。

— ちなみに、神戸の小学校って土足の学校が多いですよね? 他の街から引っ越してきた方からよく驚かれます。ちょっと外国っぽい気もしますがそういうところに由来があるのでしょうか。

校長先生

私自身も神戸の生まれ育ちですが、確かに子どものときからずっと土足ですね。最近の新設された学校では上履きに履き替えるところもあるようですが、伝統的には神戸の小学校は土足のところが多いですね。なぜかはわかりませんけれども。 

— ともあれ、いろんな国のバックボーンを持つ子どもたち同士が一緒に学ぶというのは多様な価値観に自然と触れられていいですね。

校長先生

子ども同士も慣れているので、髪の色が違うからってそれでからかうようなこともありません。また一方で休み時間になれば日本語じゃなくて中国語でしゃべっている子ども同士もいたりします。ここの子どもたちにとってはこの環境が普通なんです。

ふれあいフェスティバル

— 多様な国籍が生徒の背景にある「こうべ小学校」では、文化の面でもユニークな交流ができそうな気がしますが、いかがですか。

校長先生

実際、毎年11月の下旬に、校内の30の教室を使って、いろんな国の文化や遊びを体験を通して学ぶ「こうべふれあいフェスティバル」というイベントを行っています。実はそのときの講師の大半は、この学校に通う子どもたちの保護者、もしくは卒業生の親御さんや地域住民の方々なんですよ。学校と、地域の人たちとで協力してつくっているのですが、いろんな国の人たちがすぐ集まるのでありがたいです(笑)

— どんな国の部屋があるのですか?

校長先生

セネガル、タイ、ジャマイカ、インド、インドネシア、オーストラリア、ペルー、中国、日本など……。そしてどの部屋も体験プログラムがあるのですが、たとえばインドネシアなら「アンコルン」という民族楽器の演奏を教えてくれます。

また中国のブースでは毎年中国の切り絵ができます。日本のブースでは地域の神社の方たちが来て、和楽器の演奏をしてくれます。

— こうべ小学校の子どもでなくても参加したくなりますね(笑)

校長先生

このときは地域の方ならどなたでも学校に来て見学していただけますよ。もう20年近くも前から行っているイベントです。また、ご近所の聖ミカエル国際学校や神戸中華同文学校の子どもたちも、授業の一環という形で、毎年参加しに来てくれ、学校同士の良い交流の機会にもなっています。

— 親御さんにとっても、学校や地域の雰囲気が直接わかるいい機会ですね。

校長先生

ずっと続く我が校の伝統行事です。最初にお話ししたとおり多国籍ということに関して自然な形で受け入れており、いろんな子が通えるこの環境はこれからも大切に守っていきたいですね。

(2016年11月19日にこうべ小学校で行われた「こうべふれあいフェスティバル」の各教室の模様。左上から「アメリカ・ハワイ」「パキスタン」「イギリス」「アメリカ」 写真提供=こうべ小学校)

取材・執筆=安田洋平 撮影=藤田 育 収録=「こうべ小学校」校長室にて収録 2016年9月21日