Nomads

Apr 2016
Interview 02

地方であることがデメリットではない時代(2/2)

この街では仕事と暮らしがそこまで分かれていない

移住者のためのシェアオフィス

— 北野町にあるシェアオフィス「kitanomad」では、ブランディングの仕事を専門にされている「AKIND」のおふたりの他、編集者、建築家、グラフィックデザイナー、映像作家など、さまざまな職種の方が集まっていますが、神戸R不動産の代表もされている小泉さんは今後こうしたシェアオフィスの可能性をどう捉えていますか?

小泉

こうした場所で出会った人同士で一緒に仕事をする機会が生まれる、面白い展開が起こるということが、そこにある可能性だと思います。北野という場所は出張などで他のところと行き来しながら仕事する場所としては、非常に勝手がいい。また商業もありつつも、もともとは住宅街ですから、住居も近くに持ち、作業の拠点はこうしたシェアオフィスで、という組み合わせも良いと思います。

またシェアオフィスという選択以外に、北野町にはもともと外国人マンションとして建てられた、面積が広く部屋数も多い物件がありますから、そうした場所を住居兼仕事場として使う工夫もできます。

既にこの地域はここ数年で東京など県外からの移住者が多くなっているエリアなのですが、こうした物件の新しい使われ方と相まって、仕事をする人同士のネットワークがもっと広がっていけば、より一層北野町は面白くなると思います。

森江

僕ら自身の実感として、地方に移ってきたときのスタートアップとしてシェアオフィスの存在は大きいです。コピー機やファックスを共有できるといった設備的なことよりも、その場所がきっかけで良いかたちでの人のつながりをつくれていることが、そう思う理由です。

距離によるデメリットはもはやない

— 他の人も神戸に移ってきて仕事ができると思いますか?

島田

大都市圏との差で考えると、そもそも家賃が安いというアドバンテージがあると思います。家賃というのは事業をする上で結構大きなことです。ですから、その点で我々はだいぶ得している。加えて、得をしている分、「東京から呼ばれたらすぐ行きます」という気持ちで常にいられるんですね。

かかる時間も、今はドア・トゥー・ドアで2時間半くらいあれば行けてしまいますし。東京の方で神戸からわざわざ呼ぶのが申し訳ないとおっしゃる方もいるのですが、そもそも僕は、家賃が浮いている分を交通費で使うつもりでいるので気にしないでくださいとお伝えするようにしています。

— 最近、ハングアウト(※2)やスカイプが一般化してきて、昔に比べたら離れたところにいても、仕事上の不便がかなり少ない状況になってきましたよね。 ※2……ハングアウトは、Google社が提供している、ビデオ会議のツールのこと。

島田

ちょうど今オーストラリアの仕事を1件していますけど、ほとんど行かなくても大丈夫ですね。毎日現場から何がしか届くし、必要があればスカイプで会議すればいい。電話もIP電話でただで掛けられる。これが20年前だったら、やれファックスだ、郵便物がまだ届かない、といった感じでたぶんやっていられないだろうと思いますが(笑)。もはや距離によるデメリットというのは確実になくなってきていて、世界と仕事をするという意味では楽ですよね。

— 岩野さん森江さんもよくオフィスから外国の方とハングアウトしているそうですね。

岩野

海外のクライアントとの仕事はまだできていないですが、国内の案件を海外のデザイナーと組んで仕事することには積極的に取り組んでいます。面白いのが、たとえばニューヨークのデザイナー相手だとビジネスライクな付き合いで終わってしまうことが多いのに、ストックホルムのデザイナーと話していると、大都市ではない共感や意気投合をする場面が多くあって、一緒に何かやる?みたいな話に発展しやすいですね。

神戸の中でもダイバーシティーが進んでいる街

— 世界という点で言うと、北野町そのものが本当にインターナショナルで、いろんな国籍の人がいますよね。外国人が多いと言われる神戸の中でも、人種の多様性が際立っている印象を受けます。

島田

長く暮らしている、ということが何よりユニークですよね。ビジネスで数年間赴任しますというケースは、大都市圏では珍しくないと思いますが、北野では外国人のひと達が、もう数世代にわたって完全に自身の街として住んでいる。そもそも、こんなに小さな区域の中に、これだけいろんな宗教の寺院があるところは日本中でもここしかない。キリスト教の教会も宗派ごとにあるし、イスラム教のモスクも、ジャイナ教の寺院も、ユダヤ教会などもある。

そういう点で言うと、北野は子育てするのにも非常に良いのではという気がします。この地域の子どもが通う幼稚園や小学校はかなり多国籍の状況で、子どもの頃からそういう環境に親しむのは、なかなか得難い環境ではないでしょうか。

— 幼稚園などでも外国人やハーフの子どもが多いですよね。

岩野

オフィスで働いていても、外に出ると外国人のお母さんがベビーカーを引いていたり、そういう光景にしょっちゅう出会います。また、仕事と暮らしということは、どうしても線を引いてしまいがちだけれども、いい意味でこの街はそこまで分かれていないというか。シェアオフィスに、知り合いの子どもが寄っていったり。オフィスの打ち合わせスペースで婦人会の会議も行われていたり。そうした風景が当たり前のこととしてある感じ。仕事場だけれども、すぐ横に暮らしがある、という環境ですよね。

都市としての「祝祭感」

— あえて神戸で働き暮らす上での不満があるとすればどんなことですか?

島田

都市に住んでいることの「祝祭感」に少し欠けているところでしょうか。そこここでイベントが行われているとか、夜が賑わっていて人々がお喋りしているとか、都市を謳歌している楽しい感じの光景がもう少し多いと良いですね。この規模の都市にしては、驚くほど夜お店が閉まるのが早いという気がしますし。

ただ、そういう意味で言えば、昨年から東遊園地でEAT LOCAL KOBEのファーマーズマーケットや、アーバンピクニックといったイベントが始まり、また継続していっているのがすごくいいなと思います。今後あのような動きがもっと活発になってくると良いですね。

— ワーカーとして、今後もっとこういう環境ができてくれたら良いという要望はありますか。

森江

夜行くと、決まって誰かしら知り合いがいて、喋ったり飲んだりできるような場所が1箇所でもあるといいと思います。

岩野

神戸もここ数年で確実に新しいコミュニティーが育ってきている実感があるので、もうそろそろ、みんなにとっての象徴的な場所ができてもいい頃ですよね。「とりあえずあそこ行こうぜ」と、誘えて集まれるような。泊まれて食べれて夜も遊べて、若い世代や外国人が集まれる。県外から知人が来たときにも連れていけるような場所が欲しい。

— 北野町には不動産屋も、建築、ブランディング、編集、デザイン、映像も、それぞれのプロがいるわけですからね。

島田

じゃあ、あと必要なのは出資してくれる人ですね(笑)