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2017.02.23

WORK+STAYプログラム 参加体験レポート vol.2(後編)

「試しに神戸で暮らしながら、仕事してみませんか?」。1週間神戸に滞在してもらいながら、この土地での働き方についても考えてもらうプログラム「WORK+STAY」。参加2組目の原田さんの体験レポート後半をお送りします。前半は山での暮らしを中心に見学しましたが、後半は街で自分の仕事の仕方をつくっている人たちを訪ねました。

(前半はこちらから読めます)

職人の集まる高架下空間へ

2016年4月に、高架下で工房兼ショップを構えた靴のブランド「ANCHOR BRIDGE」を訪問。

山側の神戸から今度は打って変わって街の中心部へ。

2年程前から王子公園駅~春日野道駅の間の高架下空間に、家具や革製品の職人が少しずつ集積してきています。

(参考記事:ポテンシャルを持つ高架下

その中で、2016年4月に東京・浅草から移ってきた、靴を中心とした革製品のブランド「ANCHOR BRIDGE」を訪れました。

代表の村橋由紘さんに話を聞きました。

原田さん「どうしてこの場所に来ようと?」

村橋さん「もともと私は出身が神戸市で、神戸の靴学校に通っていました。その後東京に14年居ましたが、この物件が持つ空間のポテンシャルに魅力を感じて移転してきました。

職業上、1トン近くある大きな機械を使用するで、そうした機械を設置することができること。作業する上で音も出るのでそれが許されること。様々な条件をクリアする物件を探していたときにぴったりだったのが、この高架下だったのです」

高架下にある「ANCHOR BRIDGE」。基本は工房だが、広さにゆとりがあり入り口近くの部分はショップ兼ショールームとなっている。ブランドの靴が並ぶ。

全体の面積が90平米。うち60平米が作業スペースで30平米がショップ兼ショールームになっている。

原田さん「東京時代はどんなところに工房を構えていたのですか?」

村橋さん「浅草は皮革産業が盛んな町です。周辺は同業種の人たちが集まっており材料屋や資材屋、加工専門職などが多く、この仕事に対する地域的な理解もありました。皆が協力しあって産業として成り立っているようなところでした。その一方、作業面積とすれば、現在の1/3位で仕事をこなしていました。

現在の場所は基本的にアトリエとして用いていますがショップも併設することができ、自分たちのブランドの世界観と製造現場のリアリティー、その両方を伝えることができるところを気に入っています」

 

北野のコーヒー焙煎業者

「BEYOND COFFEE ROASTERS」を営む木村大輔さん。

王子公園駅~春日野道駅の間の高架下空間は鉄道直下、駅近の場所ですが、そこからちょっと山側の住宅地エリアに入っていった辺りを次に案内。訪れたのは北野。

コーヒー豆焙煎事業者の「BEYOND COFFEE ROASTERS」を営む木村大輔さんの元へ。

木村さんは2014年に焙煎事業者としてのキャリアを神戸でスタートさせました。

(参考記事:暮らしのそばで食を営む

「コーヒーという商材にはまだまだ展開力があると思うんです」

「枠組みや境界線、そして国境も越えられるビジネスを」という気持ちから「BEYOND」と屋号に名付けた。

「いい豆を仕入れてちゃんと焙煎すればおいしいコーヒー豆を提供することはできる。そして、それ以上でも以下でもない。豆を自分で常に海外まで買い付けに行けるかといえばそれは現状できない。かといって飲食をやりたいのかと言えばそういう志向でも今はない。この場所から成長していくには、小売で売れるものを増やすしかないと思っているんです。『面白くておいしいもの』をつくりたい。

ご縁があって尾道のクラフトチョコレートを置くようになったり、香港にある飲食店と一緒にコーヒー焼酎の開発をしたり。常に他の商材とかけ合わせて新しいものをつくることができないかということを意識しています」

古い一軒家を借りてコーヒーの焙煎所に使っている。

北野町でのひとこま。ここでは、配達に訪れた神戸市内の有機農家の方と話すこともできた。

高架下の動向が一望できる「灘高架下オープンナイト」

盛りだくさんの1日ですが、段々と夕暮れに近づいてきました。実は、この日は、夜から高架下空間の全部のアトリエやスタジオが1日だけ公開されるイベント「灘高架下オープンナイト」の日だったのです。

高架下で起こっている今の動きを一度に見てもらえる絶好のチャンスと、原田さんと回ることにしました。普段は工房だけで一般には公開していない空間もあるのですが、今回は13の空間が一般公開になりました。

阪急・王子公園駅から春日野道駅にかけて続くコンクリート剥き出しの高架下空間が面白く変わってきている。

こちらはダンススタジオ「box169」。他では得られない天井高が特徴的。

イベント当日(2016年10月21日)にオープンした、家具と内装工事を行う「Draw Factory」。

高架下に最初に移ってきた家具工房兼ショップの「Magical Furniture 」。界隈の変貌のきっかけをつくった。

「Magical Furniture」代表で家具職人の小寺昌樹さん。

DIY+設計集団「Team Clapton」のアトリエ。一緒に空間をつくり時間も共有するという、ユニークな建築のアプローチを行う。

駅1区間の間に、多様な製造業の空間が集まっている。

オリジナル額縁をオーダーできる工房「FLYING FRAMES」。2014年オープン。

主に海外に製品を卸している、バッグ・ブランド「Cultivate Industry」の工房。2015年に高架下に移ってきた。

「cornelian taurus by daisuke iwanaga」のデザイナー、岩永大介さん。

今回のイベント用に高架下の空いている区画を特別に使わせてもらい、交流拠点に。

訪れた一般の方も店主も入り混じって交流。

近隣の美味いスリランカ料理の店が出店、カレーを振る舞う。

このイベントは一般の方々との接点づくりのほか、高架下の店主同士が親しくなるというきっかけにもなった。

「この場に居合わせられた」嬉しさがある、と原田さんもこのイベントを堪能。

店主が主体となって手づくりで望んだイベント。まずは無事に終わってお疲れ様の乾杯!

原田さん「本当にそれぞれ異なる独自のアプローチがあるつくり手の皆さんで面白かったし、なおかつ高架下全体で見ると、ストリートとしての魅力もあった。滞在中にこのイベントに出会えたのはラッキーでしたね。

よそ者ながら、まさに変化していく只中に立ち会えた感動がありました」

それぞれのものづくりを頑張りながら、協力もし合う高架下の仲間たち。最後はみんなで記念撮影。

一日の感想

以上、1週間滞在した原田さんのWORK+STAYのうちの1日を切り取ってレポートしました。

山、牧場、高架下のアトリエ群、コーヒー焙煎所……、暮らしの環境とものづくりという観点からさまざまな場所をチラ見する1日でしたが、どんな印象だったのでしょうか。

原田さん「少しですが“普段の様子”ということが間近に見られたことはとても貴重でした。またどの方も、自らの手で力強く仕事を創り出していて、刺激にもなりました。

それから、東京だと都市としてのサイズも関係しているのでしょうが、同業者同士がつながっていても割と棲み分けがされている印象なのに対して、神戸では分野も超えて、あの人もあの人もとつながっているという『混ざり方』がとても新鮮で面白かった。

地域で面白い活動をしている人々の現場に『居合わせることができる』チャンスを与えてもらえたがこの滞在の一番の有意義さでした。

おかげで自分自身、少しではあるけど、この場所に居る姿をイメージできた気がします。

最終的には自分がどう仕事をつくって、関与できるのかだと思いました。貴重な機会をありがとうございました!」

 

参考URL
ANCHOR BRIDGE」ホームページ
BEYOND COFFEE ROASTERS」ホームページ
box169」ホームページ
Draw Factory」ホームページ
Magical Furniture 」ホームページ
Team Clapton」ホームページ
FLYING FRAMES 」ホームページ
Cultivate Industry」ホームページ

 

取材・執筆=安田洋平 撮影=片岡杏子 収録 2016年10月21日