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Dec 2017
Column

500 KOBE ACCELERATOR

世界でも有数のアクセラレーション・プログラムを神戸で

500 Startupsによる7週間のプログラム

世界随一のレベルの高さを誇るアクセラレーション・プログラム(起業家育成支援プログラム)が昨年度から神戸で行われていることを知っているだろうか。「500 KOBE ACCELERATOR」がそれだ。今年は8/21 から10/10までの7週間にわたって開催された。(※9/2~9/18の休止期間を挟む) 

昨今、起業家向けアクセラレーション・プログラムは日本でもいろんな場所さまざまな主催団体によって行われているが、アメリカのシリコンバレーを中心拠点に50か国1500社以上の企業を支援する世界的投資ファンド「500 Startups」の育成プログラムを7週間にも及ぶ長さで集中して受けられるのは今のところ日本国内では神戸しかない。選考に通過すれば参加資格が得られ受講料は完全無料。この期間は月〜金、朝10時から夕方5時まで常にシリコンバレーから週替りで来るメンター(起業家に指導や助言を行う人)がいて、午前はビジネスの進め方に関するレクチャー、午後はピッチ(投資家向けのプレゼンテーション)のトレーニングや1対1のメンタリングといったスケジュールが組まれている。参加者たちはメンターからのアドバイスを間断なく受け、またこうしたフィードバックを生かしすぐさま事業の修正・改善を行う。こうしたサイクルを繰り返し行い、最終的にデモ・デイと呼ばれる一般公開イベントで2分間のピッチを投資家や企業の担当者、大学関係者などの来場者に向けて行うという流れだ。

集大成というべきデモ・デイの発表では、登壇者の全員から1分1秒を無駄にするまい、という気概、緊張感、熱気が伝わってくるし、ライブならではのスリリングな臨場感に満ちている。そこまでの日々がいかに研鑽の毎日であったかを肌で感じることができる。 

優秀な“ユニコーン”を生み出す場に

そもそもこのプログラムは2015年に神戸市長がシリコンバレーを訪れた折に、500Startupsメンバーと会談をして感銘を受けたことから始まった。そして日本でも珍しい、自治体と民間の投資ファンドがパートナー関係で協働する本格的な若手起業家の育成プログラムが実現することになった。市長は500 KOBE ACCELERATOR の中間発表イベントでこう話した。「若者に注目して新しいものを生み出していくことを神戸市のアクションとしてより行っていきたい。日本には、“ユニコーン企業(※)”と呼ばれる成長企業が他国と比べて少ない。その発掘と育成を手がける発信の拠点になっていけたら」

※企業としての評価額が10億ドル以上で、なおかつ非上場のベンチャー企業。 ベンチャーキャピタルを始めとする投資家から巨額の利益をもたらす可能性のあると考えられている企業。その希少価値から想像上の生き物 “ユニコーン”に例えられる。

2016年度が初年度となり試験的に実施され、そして2017年度、より本格的な形で第2回が行われた。参加企業は200社以上の応募から21社が選ばれ、その内訳は海外からが5社、国内が16社。国内は東京の会社が多く、その他神戸から3社、横浜と大阪と京都が各1社の参加となっている。

受講自体は無料と言っても遠方からの参加になると滞在費と交通費は自己負担しなければいけないし、またその間は一定量の時間を空けなければならないわけで参加企業の決意の程が伺われる。 

自分で事業を行っている者あるいは今後行おうと考えている人であったならば、完成度が高く集中したピッチが次々と繰り広げられるデモ・デイの雰囲気を味わえばこのプログラムと参加者の質の高さがわかり、次年度には自分でもこのプログラムに参加することについて真剣に検討するのではないだろうか。

素晴らしいプログラムと起業家が出会う大事さ

500Startupsから派遣されるメンターたちはシリコンバレー等で活躍する現役の起業家たちで、その経験も豊富なので、アドバイスはとにかく実践的かつ直接的。ある参加者いわくメンタリングは「毎日が1000本ノックのよう」。また 別の参加企業は「彼らの指導がもとで我々の事業ウェブサイトは翌月すぐにまるごとつくり変えることになりました(笑)」と語る。またメンターたちは常にその事業における最も重要な部分はどこかということを常に参加者たちに思い出させる。もちろん細かい部分での精度も逐一重要だが、次の瞬間にはズバリ斬り込まれる。「君のサービスは本当に社会的に役に立っているのか?」。

「BtoBかBtoCか、KPI(※)はどうか、顧客獲得コストは適正か……、ビジネス観点で我々を丸裸にすると思ったら、次の瞬間には、いきなり俯瞰的なところに立ち戻らされたりする。常に気づきを与えてくれるんです」

※重要業績評価指標のこと。Key Performance Indicatorの略。目標達成に向けての実施状況を計測するために、どれくらい実行できているかの度合い(パフォーマンス)を定量的に示す。

500 KOBE ACCELERATORの期間全体を通じて神戸に常駐しているアクセラレーション・プログラムマネージャーのマックス・フラム・シュワルツさんに話を聞いた。「神戸のプログラムはより教育に集中したものになっている。優れたポテンシャルを持った起業家はシリコンバレーに限らずどこにでもいるし、その点は世界中どこも変わらない。しかし大事なことのひとつは教育的な機会がそこにあるかどうかであり、素晴らしいプログラムと起業家が出会えばその会社はより効果的に成長していくだろう。我々が持っている経験やリソースを役立ててサポートをするということに全力を注いでいる」

実践的なヘルプの場であるから、もちろん事業の実現の上で資金がいるということであれば、そのもらい方や使い方を教えてそのチャンスを与える、という ことも含まれる。その会社にとってのベストを考え必要な助けをすることが自分たちの役割だという。

地域を変革して行くダイナモに

500 KOBE ACCELERATORの今年度の参加者たちの顔ぶれをいくつか紹介しよう。まず認知症の予防につながる、タブレットを使って簡単にできる認知機能の測定クラウドシステムの開発を手がける神戸の会社。彼らは2017年3月のサービス開始以来、すでに200社以上の医療機関で使われることに成功している。それから、オンラインでメンタルヘルスの相談サービスを提供している東京の会社。開始して1年だが既に月間30万のエンドユーザーの利用につなげており、BtoBの受注も好調だ。

その他、地域のフォトグラファーと企業をマッチングさせ、映像によるスマートなプロモーションを促進させるサービスを行う香港の会社。ワーキングプアの人たちの再就職を支援するサービスをこの12月から本格始動しようとしている神戸の女性起業家の会社。日本のコミックを使ったAR(拡張現実)アプリを新規事業として進めている神戸の会社など、各社独自性が際立っている。

参加者の何組かに今年度のプログラムを振り返ってもらった。

「アクセラレーション・プログラム自体には本当に質が高く何の不満もない。それ以外のところで言えば、せっかく神戸に長期滞在しているので、もう少し地元の人たちとの交流の機会があったら良かった。

またずっと東京を本拠地として仕事をしてきているのですが、今回神戸に長く居る中で、思った以上に遠隔でも仕事ができるな、と気づけたのは大きかった。このプログラムの実施期間中に神戸の企業からいただいた受注もあるし、せっかくの神戸との縁が今後も続くと良い。 いずれにしても事業を拡大していくことを考えると、関西にも拠点が必要になってくる。オフィスをつくる計画なども現実的に考えたいです」

「神戸はフォトジェニックなロケーションという点でも、山、街、ベイサイドと非常に豊かなリソースを持っている。写真を効果的に使ったシティプロモーションの促進という、私たちが行っている事業提案の面から考えても、ロールモデルとなりうる街だと感じています。それに建物もキュートでとても好きな街になったし(笑)、またこの先も継続的に関係を持ち再訪できたらという気持ちです」

地元から、他県から、海外からと若く才能を持った人々が神戸に集まり、地域を変革して行くダイナモとなっていってくれるのではという期待を抱かせる「500 KOBE ACCELERATOR」プログラム。同時に、神戸におけるビジネスエコシステム(※)を発芽させるための種まきともなっているに違いない。また来年度、ユニークな顔ぶれとここで出会えるのが楽しみだ。 

※企業、起業家、大学・研究機関、行政などの相互作用のなかで技術革新や社会変革が創出される仕組みを生態系になぞらえたもの。

「500 KOBE ACCELERATOR 2017」デモ・デイは10/6に神戸・KIITOで、10/10には東京都内で開催されました。投資家、企業の担当者、銀行関係者など400人を集めた東京での模様はストリーミング中継もされ、こちらから見ることが可能です。
https://www.youtube.com/watch?v=T6USrfqBIRI

参考URL
500 KOBE ACCELERATOR http://jp.500kobe.com/

取材・執筆=安田洋平 撮影=藤田 育 取材日=2017年9月29日・10月6日