International

Feb 2018
Column

URBAN PICNIC

神戸の街の真ん中に芝生のリビングを出現させよう

土のグラウンドを全面芝生の“アウトドアリビング”に

神戸の真ん中にある公園がいつでも、楽しくハッピーに過ごせて使えるように。

神戸の中心地にある公園「東遊園地」をアウトドアリビングにする試み「URBAN PICNIC」は民間からの提案がきっかけとなって始まった社会実験だ。三宮駅から港側へ10分、まさしく神戸の中心に位置しながら、そこで日常的に人々がくつろぐ光景は乏しかった。阪神淡路大震災を経験した被災者の鎮魂と再生への希望を託して20年来続いている「神戸ルミナリエ」や、同じく震災をきっかけに深まった人々の絆を大切に守る追悼行事「1.17のつどい」、昭和46年から続く神戸最大の市民参加型フェスティバル「神戸まつり」などといったイベントで会場として使われるときは大いに賑わうが、それ以外のときは、すっぽり人々の頭から公園という意識が抜け落ち、どちらかと言えば閑散としていた。

そんな中、市民有志から公園の使い方についての提案があった。その提案内容の中でも特に際立っていたのが、「公園の中心を占める多目的広場の土のグラウンドを全面芝生化してはどうか」というものだった。そうすれば人々は都心にいながらピクニックしているような気分で自然と憩うに違いない。市はこの提案に賛同、早速デザイン都市推進部(現:創造都市推進部)が主導するかたちで社会実験を開始することを決めた。

初年度の2015年は春と秋に2週間ずつ実験が行われた。公園の一部をまず小規模に芝生化しその横にカフェとアウトドアライブラリーを設置。また同じタイミングで始めていたEAT LOCAL KOBEファーマーズマーケットの取り組みもURBAN PICNICの開催時期に合わせて、相乗的に公園のにぎわい創出につなげるようにした。

初年度が終わり、活動が一定の評価を受けたことから神戸市では引き続き取り組みを継続することを決め、2016年度には時期を7月から11月上旬までの約4か月間に規模を拡大し、神戸市からの公募事業とした。もともとの提案した市民有志たちは社団法人を設立し公募を勝ち取り、市から受託して運営を行っている。また、2016年には本格的にグラウンドのほぼ全面(2500平方メートル)を芝生化する実験に乗り出すなど、実施規模は徐々に大きくなっている。

日本に公園文化が持ち込まれた記念碑的な場所「東遊園地」

実は、「東遊園地」は日本全体で見ても古い歴史を持つ公園のひとつである。1868年に神戸が開港した際、外国人の求めに応じ居留地に隣接した場所で、彼らがスポーツをするためのレクリエーショングラウンドとして開設された。「東遊園地」という名も、もともと外国人居留地(現在の旧居留地)の「東」につくられたことに由来している。日本でも古い会員制スポーツクラブのひとつとされる「神戸レガッタ&アスレチッククラブ」がその中に置かれ(※現在は磯上公園内に移転)、外国人はサッカー、ラグビー、野球などに興じ、それまで日本になかったスポーツが広まっていくきっかけもつくった。

また東遊園地ができた当初は外国人専用のクラブハウスもあった。その中にはボウリングレーンが設置されていて、これにより東遊園地は日本ボウリング発祥の場所とも言われている(東遊園地内にボウリング球の形をした碑がある)。クラブハウスはその後神戸倶楽部の拠点となり(現在は北野町に移転)、レンガ造りの立派な洋館が新たにつくられた。その中にはバーやライブラリー、ビリヤード室、ボウリング場があったそうだ。現在、公園の南側にある公園管理事務所の建物は、かつての神戸倶楽部の洋館の姿を模してつくられたものだ。

公園をみんなで育てて使う「コモン・プレイス」に

つまり東遊園地は「公園」という文化が日本に入ってきたルーツとしての場所でもあるのだ。始まりは外国人専用の公園であったが1899年に返還され、そこから文字通り神戸市管轄の公園となり今日まで続く。 

しかし、URBAN PICNICのアイデアを提案した市民のひとりであり、現在事務局代表を務める村上豪英さんはこの取り組みを開始して間もなく、毎日この辺りを散歩するのが日課という近隣住民のひとりから「公園ができて本当に良かった」と言われたそうだ。東遊園地は、公園としての呼吸を再び取り戻しつつある。

村上さんいわく、「市と協力しながら行っていますが、大事なのは『市民の主体性が半歩先を行っている』意識」という。URBAN PICNICの運営するもののうち、カフェだけは有償のスタッフによって賄われているが、それ以外は基本的に無償の市民ボランティアが中心で現在60名程度が関わっている。近隣の大学の建築学科や環境保全マネジメントのコースの教授が取り組みに賛同し、その学生たちが積極的にボランティアに参加している。また2017年のカフェのデザインは神戸在住の建築家、島田 陽さんが手掛けた。「公共空間におけるコミュニケーションのあり方を再編集することに積極的な関心を持って参加してもらっています」(村上さん)。またURBAN PICNICの期間中に開催されるさまざまな公園イベントは事務局企画のプログラムもあるが、公募によって市民が手を挙げ自主的につくっているイベントも多い。それまでイベントの企画をしたことがなくても、公園を使って何かプログラムを行ってみようという人には積極的に場を開いている。

「公共の空間なので商売を目的にしているものや、あまりに閉鎖的なイベントはお断りするようにしています。市民の方ひとりひとりに『自分も主催する側に回ってみよう』と思ってもらいたい。東遊園地を気持ちの良い空間に、みんなで一緒に育てていく仕組みを推進したい」

ちょうど取材で訪れた昨年10月某日も「楽器に触れる東遊園地」という公募イベントが行われており、たくさんの人々が思い思いに好きな楽器を携え東遊園地の芝生に集まってきていた。またその横ではヨガのイベントも行われていた。他にも、夜の演奏会や、芝生の上で日中ワインを楽しむ「ワインピクニック」などといったイベントが定期的に開催されているという。

また19時までオープンしているカフェの横には「アウトドアライブラリー」があり、市民から献本された約300冊の本が並んでいて自由に選んで公園内で読書をすることができる。献本は継続的に受け付けているが、募集している本のテーマはシンプル。「あなたが公園で読むのにおすすめだと思う本を寄贈してください!」。

「日常」と「非日常」をどう組み合わせていくか

「7〜11月という期間限定の社会実験のため、芝生もカフェもライブラリーもシーズンが終わると撤去しないといけません。神戸ルミナリエなどのイベントを開催する関係がありますから致し方ないですが、こうして日常化した緑の公園の風景がリセットされてルミナリエなどの非日常的な空間になって、その後冬が来て間が空いて、それからまた春になってURBAN PICNICが再開して……。日常と非日常、どちらも重要ですが、どう折り合いを付けていくのが良いのか。『東遊園地が芝生になって気持ちの良い空間になっているらしい』という、市民の間での良い評判も耳にしているだけに、どうしたらより良い循環がつくっていけるのかが今後の課題と思います」(村上さん)

以前のコラム「三宮駅前未来図」でも紹介したとおり、三宮駅周辺は大規模な再整備が今後進んでいく予定で、神戸市として「えき≈まち空間」を掲げ、駅周辺は歩いてどこへも巡りやすい街づくりが目指されている。そうした再整備計画の点でも東遊園地の活性化は、街の回遊の拠点として重要な意味を持っている。神戸の街の未来のビジョンにおいて、東遊園地のパークマネジメントは大きな鍵を握っており、それだけにURBAN PICNICが持つ意義は大きい。

URBAN PICNIC  http://urbanpicnic.jp/

“みんなの声でつくる東遊園地再整備プロジェクト”サイト http://www.higashi-yuenchi.jp/

2018年のURBAN PINICの開催予定について決まりましたら上記サイトにてお知らせします。

取材・執筆=安田洋平 撮影=藤田 育 取材日=2017年10月9日