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Mar 2017
Column

三宮駅前未来図

三宮駅周辺はこれからこう変わる

今後、神戸の玄関口「三宮」の駅周辺地域が大きく再整備される方向であることをご存知だろうか。

できるだけ車が入ってこられない、人と公共交通を最優先にした駅前空間。
駅の改札を出たらすぐ街が広がっていながら、同時に憩えて滞留もできる広場的なつくり。
現在分散してしまっている中・長距離バスの乗降場を集約して、わかりやすく。
多方面の人からの刺激を受けることができ、新しい仕事を創り出す、知的交流拠点を駅前に。独立・起業を目指す人たちに手厚いサポートをするスタートアップオフィス。
港町・神戸のアイデンティティーを大切に、ウォーターフロントをより市民が利用できるような「開かれた空間」に。

このような構想を神戸市は、平成27年9月に発表した。構想をすべて実現するのには長い年月を要するが、取り組みをひとつひとつ積み重ねて前に進めていくとしている。現在の状況について、市の担当者に聞いた。

話を聞いた人/神戸市住宅都市局計画部 都心三宮再整備課 都心企画係長 菅原真也さん。同 計画課 計画係長 秋田大介さん。

人優先の駅前空間への“変換”

— 神戸の玄関口・三宮の駅周辺の街が大きく変わろうとしていると聞きました。

秋田

神戸市では阪神淡路大震災以降、何をおいてもまず復興に力を入れて行ってきた経緯があり、三宮駅前の再整備については長い間、後回しになってきました。しかし震災から20年が経過し、財政的にも一定の目途が立ってきましたし、神戸阪急ビル東館やJR三ノ宮駅ビルの建て替え(※1)が検討されている中で、我々としても駅前をどうすべきかについて、議論を一気に加速させていきました。

(※1)神戸阪急ビル東館は2021年に新装予定、JR三ノ宮駅ビルは2018年春に閉館が決定

そして話し合いを重ね行き着いた結論としては、「人を中心とした街をつくらないとだめだ」というものでした。

これからは車の交通よりも、人。歩行者と公共交通を優先した場であること。また「駅前」というより、駅すなわち街であるような「えき≈まち空間」。 そのようなイメージで三宮駅周辺のあり方を再編していけたらという話になったのです。

また、「地上を歩くこと」を大切にしようと。 これまでも歩行者を重視したまちづくりは進めてきました。3層ネットワーク構想と称し、地上の歩道・地下通路・デッキという、3層によって歩行者空間を充実させていこうという取り組みです。

けれども、よく考えたら「人はもっと地上に居たいんじゃないか」と思ったのです。とりわけ神戸のような、山や海に周りを挟まれ、空間的にも過密ではない街の環境の中では、地上中心にゆったり回遊したいという気持ちが強いのではないかと。 また、眺望の点でも歩きながら山が見えるといった豊かさを感じられる環境が喜ばれるのではないかという話しになりました。

— そして車をできるだけ駅前から減らしていくと。

菅原

もちろん足としての自動車は大事だと思います。でもよく考えてみれば、三宮駅前に車で来て用を足すというよりも、実際には通過している場合が多いのではないかと。ならば少しずつ、車の通行を外周道路へ誘導していくことはできないか。

人が地上を自由に歩けるようになるためには、車を別のところへ誘導していかないといけませんが、高架道路をつくって車を通すと景観が阻害されますし、地下に流そうとしても、既に多くの店舗が並ぶ地下街や鉄道があって、物理的に不可能です。

もちろん車を外周道路へ誘導していくとしても一朝一夕にできることではありませんから、まだ何年後に実現と言える話ではありません。ですが、段階的に駅前における歩行者の空間を広げていくつもりでいます。

秋田

そもそも駅前という、たくさんの人が集まるところに車が入ってくること自体にリスクがあるので、そういう意味でも車でのアクセスを見直したいですね。そのためにはまた、交通の体系を見直して、車の総量を地域全体としても減らしていける環境づくりをしないといけないと思っています。

(左)神戸市住宅都市局計画部 計画課 計画係長 秋田大介さん。(右)同 都心三宮再整備課 都心企画係長 菅原真也さん

駅前に新たなバスターミナルを

— 駅前の商業施設「ミント神戸」の横に中・長距離バスのターミナルを整備される予定とのことですが。

菅原

今年、平成29年に基本計画をつくり、平成32年度に現地着手を検討しています。今は地権者や地元の方など、各方面への説明を重ねているところです。

実は三宮は中長距離バスの行き先も豊富で充実しているのですが、乗り場が一箇所にまとまっていなかったり、乗り場と降り場で場所が違っていたり、「わかりにくい」とよく言われてきました。 また観光バス以外にも、チャーターのバスを着けられる場所が確保されていないとの指摘もあります。

「ミント神戸」の1階にあるバスターミナルとその東側のエリアを一体的に利用する新たなバスターミナルを整備しようと考えています。

— よく神戸は横の移動は便利だが、縦の移動が行きにくいと言われますが、例えば市内の周遊バスの整備などもお考えでしょうか。

秋田

中長距離バスのターミナルを降りたら、今度は市内周遊バスでウォーターフロントへ、北野へ、元町へといったように、ストレスなく乗り継ぎできるようなわかりやすい交通を考えています。例えば、周遊バスの路線が海方面、山方面、街方面といったようにシンプルに3路線あり、例えば青・緑・赤のように色分けしてあれば使いやすいのではないか。また、乗る度にお金がかかるのではなく、1回乗ったら一定時間内は乗降し放題などといった料金体系についても検討しています。

どこへも歩いて巡りやすい街に

— 交通の体系を見直す一方で、先程のお話で言えば「歩いて巡りやすい」街ということも充実させていくのでしょうか。

菅原

ええ。例えば、北野も港の辺りも神戸らしい魅力的なエリアなのですが、近いようでいてちょっと遠い……との感覚を持っていらっしゃる方は多いと思います。

三宮駅から港まで歩いても約1キロ、同じく三宮駅から丘の上の北野までも1キロという距離感ですから散歩で行けないことはないのですが、目的地までの間に立ち寄れるポイントをもっと増やしていかないといけないとは思っています。例えば休憩スペース。ベンチがあるだけでも違うはず。今、三宮中央通りにおいて、パークレット(※2)を設置しています。

(※2)パークレット…車道(停車帯)などにウッドデッキを敷き、憩いや賑わいの場を創出する物。

秋田

東遊園地で現在行っている社会実験「アーバンピクニック」(※3)では、芝生を敷き詰めたことによって、人々が以前よりも訪れるようになりました。またこれにより、その先にあるデザインクリエイティブセンター・神戸(KIITO)にも以前より足を伸ばしやすくなっているようです。駅から直接KIITOを目指すと遠い感じがしますが、東遊園地で遊んでからKIITOに行くという順番だと、心理的なハードルも低くなるのですね。

(※3)アーバンピクニック…東遊園地に仮設の芝生を敷き、都心と自然を同時に楽しむ神戸らしいライフスタイルを発信する社会実験。

— ウォーターフロントも再整備を進めていますよね。

秋田

港は神戸のアイデンティティーであると思いますし、それだけに、ウォーターフロントをもっと市民に開いていかなければいけない。第1突堤は既に再開発が進んでいますが、それ以外の部分にもまだ変えられる余地があり、非常にポテンシャルがある公共空間と思っています。

ビジョンの共有から始めよう

— それ以外には三宮周辺の再整備構想の中ではどのようなことをお考えなのでしょう。

秋田

スタートアップを促進する機能を駅前に集約させることや、三宮中心部へのオフィス移転の促進。三宮駅前は何より事業拠点としての集積を推進させていきたいです。とりわけ若い人に。大学を卒業した後に神戸で就職ができなくて外に流出するという構造を変えていきたい。独立・起業する人たちもまだまだ多いとは言えません。三宮駅前に、知的交流の拠点としての機能を充実させたいです。

菅原

三宮周辺の再整備構想はまだこれこれがいつ出来るという具体的なロードマップが語れる段階ではありません。計画の細部の詰めもまだこれからですし調整事項も限りなく多く、ちょっとずつ変えていくとしか言いようがありません。

ただ、まず「えき≈まち空間」の目指すべき将来像をみなさんと共有したい。そこから始められればと思っています。これから、どんどん変わっていく街の姿にどうぞ期待してください。

取材・執筆=安田洋平 撮影=片岡杏子(ポートレートと空間パースを除く *ポートレートの画像提供=神戸市) 取材日=2017年2月10日