Food

Mar 2016
Interview 02

暮らしのそばで食を営む(2/2)

子どもをおぶってフライパンをふっている時もありますよ

4人の食にかかわる方々の働き方と暮らし方・後編。前篇はこちらから。

家族との暮らしと仕事

— 柘植シェフは最近、お子さんが生まれたそうですね。

柘植

はい、今は子どもをおぶってフライパンをふっている時もありますよ。奥さんと交代で面倒をみながら。10年前に自分の店をつくって、奥さんと一緒になんとかここまでやってきましたからね。生まれる前は子育てと仕事を両立できるのか、やっぱり悩みました。

でも、ここならなんとかできる気がして。神戸の飲食店は、料理を愉しむっていうのも勿論そうなんですけど、団欒のような時間を愉しむ人が多いというか。人との関わりを大事にできる気がします。10年、そういう気持ちでお客様にサービスとしての料理を作ってきました。今は常連さんがきたら、食事の合間に子どもを抱っこして面倒をみてくれることもあって、ありがたいです。そんな感じでやっていますから、子連れのお客様も増えてきましたね。

奥さんが出産の前日まで店で働いていたこともあってか、子どもも店の音に馴染んでいるんですかね。家にいるとそわそわしていて、店での時間のほうが落ち着いています。来月には9ヶ月になるので、だんだん体重も増えてきてずっと抱っこしているのも辛くなってきましたし、そろそろ歩き出す頃。だから今、店の近くにある事務所を子どもが自由に動き回れる部屋に改装しているんです。もうすぐ完成します。

— 安藤さんご夫妻は、働く場所も近く、いつも一緒にいらっしゃるイメージですね。

安藤(博)

もともとワインショップは、2003年に妻と2人でスタートしたんです。ビルの1階に店をつくって、その上の3階に住んでいました。今は、店から少し離れた場所に暮らしていますが。一昨年前の夏に、向かいにネイバーフード(注)というお店をつくりましたから、仕事をしていても店の窓から妻の姿が見える距離です。たまに、仕事終わりにスタッフたちを誘って、飲むこともありますよ。

(注)ネイバーフード・・・・・・小さな生産者の手によるこだわりの加工品や食材、近隣の農家から届く新鮮な野菜やチーズ、自家製のデリやスイーツを販売するグロサリーショップ。

FARMERS MARKETとの結びつき

— 美保さんは、昨年に続き今年もFARMERS MARKETを開催されているそうですね。

安藤(美)

EAT LOCAL KOBE(注)に関わるようになり、神戸の農家さんがたくさん集まるFARMERS MARKETの運営にも携わるようになって、改めて神戸にこんなにもたくさんの農家さんがいるんだと知りました。今は、街なかでFARMERS MARKETを開催していますが、もっといろんな場所で、いろんな時間で、例えば朝市などを開催して、農業を身近にしていきたい。そうすれば、街の暮らしが変わっていくと思うんです。お金ではない豊かさが生まれてくるんじゃないかなって思っています。

(注)EAT LOCAL KOBE・・・・・・「EAT LOCAL KOBE」は、神戸の「農水産物」や「食」を伝え、新しいコミュニケーションを創り出すプラットフォーム。神戸市内で生産されている季節の食材を紹介し、誰がつくっているのか、どこで買えるのかというわかりやすい情報を発信し、市民、生産者、レストランのシェフなどの多くの皆様と一緒に神戸の地産地消をすすめていくため、マーケットなどを開催している。

農村地域にお金以外の魅力を感じて、北区の農地に通っていたこともあったんですけど、都会暮らしが長い私には、それだけで生きていくことは難しい気がして。でも、都会に店を持つ私たちだからこそ何かできることがないかと考えて、都市と農地を食でつなぐというテーマにいきついたように思います。でも、もう少し年をとったら、やっぱり将来は北区で里山暮らしをしたいなって思っているんです。

— 柘植シェフは、神戸の農家さんとどのようなつながりがあるのでしょうか?

柘植

先日、食都神戸(注)というイベントがありました。いつもEAT LOCAL KOBEで開催しているFARMERS MARKETの集大成のようなものです。神戸の農家さんが一斉に集まってね。そこの野菜をつかって、お客様むけにお弁当を作らせてもらったんです。すごく楽しかった。やっぱり、神戸は地産地消が叶う街だと思いましたね。あんなふうに顔が見えて会話して、食べる、という一連の流れができるのはいいですね。

(注)食都神戸・・・・・・神戸市で、食を軸とした新たな都市戦略として進めている構想。

小さな街 神戸から海外へ

— 木村さんは、coffee shochuなるものをつくっているそうですね。

木村

1年位前に、たまたま日本食を輸出するコンサルタントの人が僕の店を見つけてくれて、香港でコーヒー豆を漬け込んで作る焼酎が流行っているから一緒にやらないかと。姫路の酒蔵さんでつくることが決まっていて、近所で焙煎所を探していたそうで、前の仕事で何度も香港には行っていましたし、おもしろそうなのですぐにOKしました。

近いうちに焼酎に使用するコーヒー豆を最終決定するタイミングが香港であるというので、それに参加することにしました。実は、coffee shochuの話と一緒に、香港でコーヒーのテイクアウトも始めたいと相談されたのですが、現地の担当者は僕の淹れたコーヒーをまだ飲んだことがなかったので、「とりあえずうちのコーヒーを一度飲んでから決めてよ」と突っ返していたんです。こちらも相手のことが分からないままでしたしね。

現地で、ちゃんとうちのコーヒーを飲んでもらおうと、大きな鞄にコーヒーの器具一式を詰め込んで、自腹で飛行機をとり商談の場所へ行きました。そしたら、高層ホテルの豪華なレストランに案内されて、「こ、こんなところでコーヒー淹れるのか」とちょっと興奮したんですけど、結局ミーティングがおして時間切れになってしまって一切コーヒーを淹れられず、少し苛立ちを感じながら一人だけ席をたったんです。

後日、現地でたたきつけたコーヒー豆のサンプルの中から、コロンビアとグアテマラの豆がおいしかったと連絡あって、結果その2種類のブレンドを提供することになりました。今は、香港でBEYOND COFFEE ROASTERSの豆を使った、coffee shochuもコーヒーのテイクアウトもやっています。これからも、もっと国境関係なく売っていきたいですね。

縁あって神戸で食を営む方へ

— 酒屋として、今後どんなことに取り組んでいきたいですか?

安藤(博)

僕は、街づくりに大きく関わるのが、酒屋だろうと思っています。酒屋には街のいろいろな情報がはいってきて、それをつなげていくことができる。今ね、僕だけかも知れませんが、神戸は少し元気がなくなってきているように感じています。

だから、酒屋として街の人と人をつないでいきたい。例えば店にシェフがきてくれた時はワインの話ではない話をすることも多い。アドバイスを求めてくださることもある。大都会ではない神戸で仕事をするためには、人と人との関係を大切にしながら働くことが大切だと思っています。これからこの街で食に携わる方とも、そういった関係を大事にしながら、地に足をつけて、一緒に街を盛り上げていきたいですね。

— 木村さんはどうでしょう?

木村

30歳の僕が、ひとりで焙煎所をやれているのは、コーヒーを通して色んな人と出会えたおかげなんです。正直、僕、適当なところもありますけど、コーヒーが好きというところは全然ぶれなかった。コーヒーを軸に生きていたら、いろんなことがうまくいったし、良いつながりがたくさんできたんです。差し出がましいですけど、今度は僕が神戸に恩返ししたいなと思っています。

— では最後に柘植シェフ、お願いします。

柘植

最近、ウェディングなどへのケータリングの依頼が多くなってきて。旧グッゲンハイム邸(注)には、年に20回くらい行っています。ランチとディナーの営業の合間に行くこともあってバタバタと過ごす日も多いです。

(注)旧グッゲンハイム邸・・・・・・約100年前に建てられたとされる、塩屋にある異人館。現在はウエディングをはじめ様々なイベントの開催に利用できる。

最近はアウトドアウェディングなんかも増えてきていますよね。神戸は自然に囲まれていて、外で食事を愉しむのにもぴったりな場所がたくさんあります。僕は、神戸に路面電車が復活すればいいのに、って思っているんです。神戸の景色を見ながらゆったり移動できるってすごくいい。それで、その中でレストランをやりたいな、なんて思っているんです。

今年は、ケータリングで淡路や徳島にもいくことになっています。普段ずっと店にこもっていることが多いので、レストランという箱の外にでて、もっとたくさんの人と交流できることが増えていくと楽しいですね。