Farmers

Jun 2016
Column

神戸市北区で再発見されつつある、茅葺き民家

三宮など都心には車で30分。しかし山間の農村地域で、茅葺屋根の家が今も多く残る神戸市北区。茅葺きの家に面白く住み、必要に応じて都会に出て行くという暮らし方ができる可能性があります。

茅葺き職人の復活

茅葺きの家を身近な存在として見たことはあるだろうか? 神戸市北区では、実は非常にたくさん見かける。そして現在、再評価しようという動きが若い年代の中で起こり始めている。

神戸市と言えば都会、また異国情緒溢れる港町という、どちらかといえば洋風のイメージをお持ちの方が多いかもしれない。だが実は、六甲山を隔てた北側、神戸市北区では稲穂揺れる昔ながらの日本の農村風景が広がっている。また茅葺きの古い民家が多く見られる。 

そして最近、徐々にではあるが茅葺屋根の家が再注目され始めている。 実は、神戸市北区は茅葺き古民家の棟数が多い、知る人ぞ知る「かやぶきの里」であり、平成20年に神戸市北区まちづくり推進課によって行われた調査によれば区内で約750棟の現存が認められている。

ただ現状をより正確に伝えると、茅葺屋根ならではの風情とも言うべき草屋根に上からトタンをかぶせてしまって、本来の容姿ではない状態になっているものが、実に全体の86.8%という調査結果になっている。言い換えれば草屋根の姿を留めているものは全体の13.2%しかない。

そんな中、再注目されている理由のひとつは職人の復活である。ほんの数年前まで北区で茅葺きの修繕ができる職人さんは80歳を越す高齢の方が1人いるだけだった。だが、2011年、「淡河(※)かやぶき屋根保存会 くさかんむり」という団体を、京都府南丹市美山町の茅葺き職人のもとで修行してきた相良育弥さんが立ちあげた。相良さんは現在36歳、また彼を棟梁としてその周りに同世代の職人が集まり始めている。彼らが現れたことで、茅葺きが再び葺替えられる事例が増え、また茅葺き本来の草屋根の姿に戻すことを真剣に検討する家主も出始めている。

新しい目線で捉えてみる

理由のふたつ目は住まい手側の関心である。北区の中でも特に茅葺き民家が多いと言われている地域が淡河町や山田町であるが、その淡河地域への移住を考えている人をサポートする「淡河の明日を考える会(通称 淡河ワッショイ)」という市民グループがある。彼らのもとには、北区の民家、とりわけ茅葺き古民家の空きについて県外からの問い合わせが定期的にあるという。問題は、貸せる物件がなかなか出てこないことだと淡河ワッショイのメンバーは語っている。住居以外に、カフェなどお店として使いたいという要望もあるとのこと。 (※) 淡河(読み仮名:おうご)

さらに、先述の「くさかんむり」は、UA、高木正勝、青柳 拓次、GOMAといったミュージシャンが参加したことでも話題を呼んだ淡路島での「ミライの音楽祭」というイベント(旧イベント名「縄文まつり」)の中で、茅葺きワークショップを行って若く感度の高い層に茅葺き文化の再発見を促している。また、小中学校に赴き、子どもたちに茅葺き作業体験の機会をつくっている。

「くさかんむり」の相良さんは言う。「茅葺きの文化を継承しつつ、できれば新しいチャレンジもしてみたい。たとえば今、オランダでは茅葺きが新しい建築トレンドにまで発展しています。もともと実験的な建築物が多い国ですが、茅葺きが持つ意外に自由な造形性を生かして、若い建築家がユニークな曲線美を表現するのに、茅葺きを使う例が新築の建物で出てきています。なんと、オランダでは法改正で茅葺き屋根の建物を新築でつくれるようにしてから、年間に約2,000棟の茅葺き建造物が新たに生まれているんですよ」

京都や金沢で町家が再評価され、いま町家リノベーションが巷で話題を呼んでいるように、今後、神戸市北区を発火点として茅葺き民家が新しい住まいの表現を見せていくかもしれない。