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Mar 2016
Interview02

「余地」に新しい可能性を見出す(2/2)

街を遊ぶ。鬼ごっこしたらきっと楽しい

ユメノマド ミカミマユミさん、庭のジプシー 橋口陽平さん、ヒロセガイさん、Joshua Richleyさん

下町気質でのどかな街

— ミカミさんにとって新開地とはどんな街ですか? かつては「東の浅草、西の新開地」と称されるなど一世を風靡したエリアでもありますが、1970年代頃から徐々に寂しくなっていると言われています。いわゆる下町という印象でも語られてきましたね。

ミカミ

確かに私が子どもの頃からそういう印象はありました。「その道より向こうに行ったらダメ」と親から言われたり。でも、常に「大人の目がある中で暮らしている」という感覚があって、近所のおばちゃんたちなど、知り合いの大人たちがいつも地域の子どものことは意識して見てくれていた。何かあればすぐ叱ってもらえた街でもありました。

大人になってからも「なんで新開地に住んでいるの?」と同僚には言われたりしましたから、そういうイメージはあるのでしょうね。ただ実際のところは下町気質で肩肘もはらずに気楽ですし、かなり便利で物価も安くて気に入っています。

小学校では、本当にいろんな境遇の中で育っている子たちがいました。例えば住宅街なんかだと、ある程度似た環境の子たちが集まっているけど、そういう多様性の面は良かったなと思いますね。

「余地」がチャンスにつながる

— 橋口さんが暮らす長田の住み心地はいかがですか?

橋口

長田区は新開地と同じ下町でもまたちょっと違って工場街なんですよね。

そこら中で平日はトンテンカンテン、ガガガガみたいな。平日の昼間の働く男達の空間という活気があって好きなんです。鉄工所の独特のオイルの匂いとかも悪くない。

僕は庭師なのですが、緑があまりない場所であるということにむしろ惹かれるものがあります。 工場が居並ぶ殺風景な中にこそ、植物の豊かさみたいなものを効果的に差し込んでいけるんじゃないかと。カントリーサイドでやるより、こういう街中での方が、緑を組み合わせていく面白さがある気がしますね。

だからそうした「余地」があると感じさせてくれる長田区はとても魅力的ですし、僕のような仕事をする人間に対する需要が潜在的にあると考えています。

— むしろ「無いところにこそ需要がある」という発想なのですね。

橋口

そうですね。都会ではホームセンターで買ってきたであろう、プラスチックのプランターが窮屈に置いてある光景をよく見かけるんですけど、長田の街ではドラム缶やオイル缶に植物が植えてあったりする。そういうところにすごく未来を感じるんですよ。

意外と思うかもしれませんが、鉄と植物って非常に相性が良いのです。鉄は錆びて、自然に還る。そして植物の魅力をすごく引き立ててくれる。

長田では鉄工所で鉄の加工ができるので、オリジナルの鉄の器をつくって、そこに植物を入れたりしたら面白いんじゃないでしょうか。長田にいると造園の世界の今後を想像する上でとてもヒントになるし、植木屋としてのアイデアが湧いてくるんですよ。

違った視点から眺めてみる

— ヒロセさんは、この場所にいる理由はどんなことだと思っていますか。

ヒロセ

もしかしたら不謹慎かもしれませんけど、ひびわれているっていうか、ダメージを受けているというか、そういうところが興味深いって思うんですよね。それは必ずしも建物のことだけを指すのではなくて、街全体がまとっている空気とか雰囲気にしてもそういうものを感じる。

そういう部分から僕のような人間は、刺激やインスピレーションを得るところがあるのではと思っています。このエリアは、ものを創る人にはとても面白いと思うんですよ。僕らは後から入ってきたよそ者だからこそ、違った視点で見ているという部分は大いにありますね。

— ジョシュさんはどうですか。

ジョシュ

私の故郷のデトロイトは今活性化されつつあります。かつては自動車を中心とした工業の街で、一度は廃れたけれど、古い家で空室だったところにアーティストが引っ越ししてきて、改装して住み始めている。それが大きなアーティストコミュニティーになりつつある。アーバン・ファーミング(*1)も大きな動きになってきています。工場跡地が次々と市民農園や養蜂場になっているそうです。今、神戸でも前には起こっていなかったことが次々と起こり出していますが、デトロイトで起こっていることと共通するものがあるように思っています。将来どうなるのかはわからないけど、だから今このタイミングでここにいることに楽しさを感じていますよ。

(*1)アーバン・ファーミング……都会の中で農業を行うことを実践していく活動のこと。

— ミカミさんは、今後ゲストハウスを通じてどんなことがしてみたいですか。あるいは、新開地をどんなふうに楽しんでもらいたいと思いますか。

ミカミ

私、ゲストハウスにすごくこだわっているわけではないのです。ただ、「街の景色を少し変える」という点においてゲストハウスという場所はそれをちょっと促進する働きは持っているのかもしれません。今まで居なかったいろんな人がこの街を新たに歩き出すことにはなると思いますから。

またその結果、この一帯が面白いということを発見する人がいたら、住むとかお店を始めるとか、また次の動きが何か起こるかもしれないし、そのきっかけくらいにはなれたら嬉しいですね。

街を遊ぶっていうんでしょうか。そういう意味で言えば、今したいのは新開地の街全体を使って鬼ごっこをすることですね。100人とかで。この街にはすごい地下道があったり、余白がいっぱいあるんです。人が行き交うと、新しいことが何か始まる。だからここで鬼ごっこしたら絶対楽しいって思うんですよね。