Artisans

Mar 2016
Interview 02

ポテンシャルを持つ高架下(2/2)

仕事は忙しい。でも、家族とは一緒に過ごせている。

開かれた仕事場空間

— 普段の高架下って、どのような雰囲気なんですか?

山口

僕らが借りている区画は、トンネルを挟んで「Magical Furniture」の小寺さんとお隣りなんですが、うちも小寺さんのところも開けっ放しなので作業をしているとお互いの様子が見えたり声が聞こえたりするんです。

小寺さんは家具制作の過程で出た木っ端を外に置いているんですけど、このあいだも下校中の小学生と小寺さんとの会話が聞こえてきて。「これもらっていいの?」「いいよー」って。 その後見ていたら、いつの間にか少年が小寺さんにノコギリの使い方を教えてもらいながら木を切っていたりして。子どもができない部分は小寺さんが工房の電動丸ノコで加工してあげて。微笑ましいやり取りでしたね(笑)。

— 近所の人たちとは他にどんなやり取りがありますか? 

小寺

工場なので日中は音が出たり、夜遅くまで作業をしていることもあるのですが、近くのおばちゃんとか身近な人たちはものすごく理解があるというか。高架下は歴史的にものづくりの人が多かったから、地元の人は慣れ親しんでいるのでしょうね。よく声も掛けてもらいます。

「神戸家具」を復活させたい

— 家具職人である小寺さんは、大阪から神戸に移動してきてビジネス的なデメリットはお感じになりませんでしたか? 

小寺

大阪の前は西宮にある家具の修理屋でアルバイトしていたんです。そのときに知ったのですが、神戸って日本で最も古い洋家具の会社があるんですね。また100年以上の歴史を持つ家具の会社も実は多い。

日本で真っ先に開港されて海外の人たちが洋家具を持ち込んだ。そしてその修理を地元の大工さんが行ったのが始まりで、段々と洋家具がこの地で発達していった。独特の装飾を入れた洋家具の文化が根付き、それらは「神戸家具」と呼ばれ全国的に知られていた。

— 「神戸家具」というのは初めて聞きました。

小寺

今や、「神戸家具」という言葉を知っている人は少ない。けれど、もう一度家具どころ神戸という認識を持ってもらえるよう僕らの代で頑張りたいねっていう話を神戸の仲間と飲みながらしています。

店舗を持っていない人が多いのであまり知られてないんですけど、実は僕のように小規模で家具を作っている人は神戸に多いんですよ。

仕事と家族の空間が交差する 

— 「Cultivate Industry」は岩永さんと一緒に弟さんも働かれていますが、アトリエでは弟さん以外にもお父さんがお手伝いされているんですよね。

岩永

父はもともと潜水用具を装着して水中作業をする潜水士の仕事をしていたのですが、今は平行して僕らの仕事を手伝ってくれています。そうしたゆかりがあって、僕らのバッグのディテールで使っている金具には、船具が使われているんですよ。 

— 娘さんも学校帰りに寄られると聞きました。仕事場で家族が自然に一緒にいる感じですね。

岩永

自営業ですからどうしても休日関係なく仕事をすることになりがちです。また展示会などで海外出張も多い。忙しくて家にいる時間はどうしても短くなってしまう。 でも神戸に帰ってきてからは実家も近いですからこうして父や母にもサポートしてもらえるのはありがたいです。

また、妻もものづくりの仕事なのですが、隣りの「カルティベイトギャラリー」で展示をしたり、ワークショップをしていて、そうすると自然、子どもも学校が終わったらここへ帰って来たりして。いつからか娘にも、ここで仕事を手伝ってもらっています(笑)

もちろん休みを増やして家で家族との過ごす時間をもっと取れたらと思います。でも現実難しい。となったときに、今みたいな形で家族と一緒にいる時間をつくるのもひとつのあり方なのかなって。  娘がスタッフに遊んでもらったり、このアトリエに居るみんなが家族という気持ちもあります。

これから高架下はどうなる? 

— 岩永さんは高架下の空間を二軒分続きで借りられていますが、アトリエに併設した隣のスペースをギャラリーとして使い始めたそうですね。

岩永

はい。少しずつですがギャラリーの方は僕たちのショールームである以外に、いろんな人たちに展示などで使ってもらったり、イベントをしたり、人が集まって交流できる場になればいいなと思っています。

— TEAMクラプトンの皆さんは今の空間を今後どう使っていきたいですか。

白石

今後、レンタル工房のような使い方もしてみたいです。街中だと自宅で音を出したり大きなものをつくったりできる人は少ないと思うんですけど、ここに来ればそうした作業をして作ったものを持って帰れる、といったような。

— 小寺さんは今後、高架下がどんな場所になっていったら良いと思いますか。

小寺

王子公園から春日野道の方まで続く高架下に入っているお店や工房を使うと、家づくりに必要なことは一通りできてしまう、そんなストリートになったら面白いと思いますね。

白石

僕らと同じころに入居された方で額縁屋さんなどもいますが、今度、内装屋さんや造園コンサルタントの方なども入居されると聞いています。他に東京から移ってきて靴屋さんをされる人もいますよね。高架下はある意味長屋みたいなので、お店同士気軽につきあったり、お客さんや近隣の人にも開かれていて、顔が見える感じでモノを説明したり買ってもらうことができると思います。いろんな人が移ってきて、もっとそんな感じになったらより面白いことになりますね。