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Feb 2016
Column

データから読みとく東灘区/灘区の暮らしやすさ

東灘区・灘区に住んだことのある人の多くが語るこの地域の特徴といえば、「静かで騒音が少ない」「山が近く自然が多い」「坂が多い」「学校が多く学生が多い」ということだろう。

静かな街

静かで騒音が少ないというのは、神戸市全体に対しても言われるところではあるが(図1)、神戸の都市部の中でも東灘区・灘区の、とりわけ山側は「非常に閑静」、そういう印象を持たれている方が多いのではないだろうか。 

(図1)騒音に係る苦情の状況[単位:件/100万人] (出典:平成24年度騒音規制法施行状況調査)

閑静、そして決して田舎というのでなく便利な都市部という性格も持ち、それでいて自然に恵まれ空気が綺麗、加えて三宮にも大阪にも行きやすい立地、というバランスの良さが高い人気の理由となっている。

事実、東灘区・灘区の、特に山側は古くより別荘地として高い人気があった。大阪の名だたる商人が別荘を持っていたり、また神戸港を通じて海外から移り住んだ過去の外国人たちもこの地域を好んで住んでいた。事実、駐留外国人の子どもが通う神戸の学校といえば、「カネディアン・アカデミィ」がよく知られているが、現在は六甲アイランドにあるこの学校も、もともと最初に建てられたのは六甲の山側・長峰台であった(1991(平成3)年に六甲アイランドへ移転)。

空気が綺麗

山が近い=景色が良い、夜景が美しい、そして空気が綺麗で気持ちの良い風が通り抜ける。他都市と比較してみても、神戸は平均的に風が強い都市であると言える。(図2)。そうした特徴をつくっている最たるものが、六甲山から吹き下ろしてくる「六甲おろし」であることは言うまでもない。神戸の山側の街は山の緑がつくる新鮮な酸素が常に風に流れて循環する、天然のエアー・クリーナーのようだ。

年間降水量も大都市の中では岡山の次に少ない(図3)。ジメジメしておらず「爽やかで過ごしやすい」という特徴はこうしたデータにも裏付けられている。

上から (図2)年間の平均の風速[単位:m/s](出典:気象庁ホームページH28.1.6時点、平成26年4月~平成27年3月の平均値。川崎、相模原はデータなし。) (図3)年間降水量[単位:mm](出典:気象庁ホームページ H28.1.6時点、平成26年4月~平成27年3月の平均値。川崎、相模原はデータなし。)

風光明媚

街と海を一望できる景色は、神戸の山側であれば、ある程度共通して得ることができる。ただし、そんな中でも灘区以東は山側と海側との間にかなりの標高差があり、南、つまり海側に向いた景色がより風光明媚で美しいという人が多い。 

また、大正9年に阪急電車が開通した後、その創業者である小林一三(いちぞう)氏がすすめた沿線の都市開発により、高級住宅地が造成され、多くの教育機関が誘致された。こうして日本初の田園都市構想が達成されたことで、より一層東灘区・灘区のブランドは高まった。 

坂と学校 

空気が良く景色が良い。それは言い換えると坂がきついということでもある。事実、この地域の有名大学のひとつである神戸大学は六甲山の中腹にあるが、学生の多くが良い点を「景色が良い、夜景が綺麗」と挙げる一方で、不満の項目においては口を揃えて「坂がきつい」と述べている。

実は神戸市にある大学・短大の数は政令市の中では京都に次いで2番目に多いが(図4)、この地域にも学校が集中している。大学ではたとえば神戸大学・神戸松蔭女子大・甲南大学。中学・高校は、中高一貫の私立の灘中学・高校、また六甲中学・高校など。これらの学校のいずれもきつい坂で有名である。体育会系の部活では坂道を使ったトレーニングが苛酷であると言われる。

しかしこうした学校へ通った子どもの多くは、坂の上から一望する街と海の景色を原風景として持ち、大人になってからも気に入っているという人が多い。この眺めも、このエリアが住宅地として人気が高い理由の一つかもしれない。

(図4)大学・短大の数[単位:校]、及び人口1千人あたりの学生数[単位:人]。(出典:平成26年学校基本調査)

執筆=安田洋平 写真=藤田 育