Activists

Apr 2016
Interview 02

小さいところから変えていく(2/2)

街「づくり」ではなく、街「遊び」

街「づくり」ではなく、街「遊び」

— 森本さんは塩屋の街の良さを伝える活動に尽力されていますが、何かきっかけがあったのですか?

森本

ベルギーから戻ってきて間もない頃、塩屋の街づくりを考える勉強会があって、友達と一緒に行ってみたんです。

そこでは、古くからある塩屋の商店街ではもうダメなのではないか、車も入ってこられないような道の狭さだから若者が帰ってこないのだ、という話をされていました。僕は海外から戻ってきて、日本の良さや、いろんなものが有機的に結びついたり作用しあっている塩屋という街の面白さを再発見していたところだったので、とてもびっくりしました。

もちろん、道が細過ぎて危ないとか、不便だ、という意見はわからなくはない。けれども大規模な開発ができないことで、結果的に塩屋は山の途中に建つ小さな民家からも海が眺められ、唯一無二の環境が守られているとも思うんです。

その後「塩屋百景」という塩屋の風景写真を公募する企画を立ち上げたのですが、まず塩屋に住んでいる人自身が「こんな景色、塩屋にあるんや」って、再認識することから始めたかったからです。

阪神・淡路大震災で塩屋は比較的被害が少なかった地域。だから古くからの塩屋の景観が残っていて、恵まれていると感じています。

— 塩屋の街の路地をまるごと使って行う文化祭「しおさい」など、森本さんは塩屋をフィーチャーしたイベントにたくさん関わっていらっしゃいます。それらは街づくりをしているという意識なのですか?

森本

旧グッゲンハイム邸の購入にしてもそうですが、僕が最初に動き出したアクションって、実はほとんどないんですよ。ただ、アイデアはいつも持ちあわせているから、声を掛けられて、ついつい関わることになってしまう(笑)
僕、もともとは映像作家なんですよ。そしてさらにそのルーツをたどれば、「街ウォッチャー」。年月を重ねることによって生まれる迷路のような街並みや、人の小さな営みが大好きだし、それを観察し、それをいかに面白がるかが好き。だから、街「づくり」っていうのは恐れ多くて、これは街「遊び」や街「いじり」だと思って、楽しんでやっているんです。

家族と一緒に気持ち良く暮らせる幸せ

— 山内さんがご家族で塩屋に越してこようと思った直接的なきっかけは何だったのですか?

山内

子どもが生まれたことですね。僕自身は正直どこでも仕事ができる。でも家で子どもがバタバタ走れるようにしたいと思って。今、塩屋の家は一軒家です。100平米ぐらいはある。さっきアリさんが言ったように、直しながら使う感じで、部分的にはDIYしないといけないですし、2階部分はまだ全然完成していないんです。でも塩屋にある小さい民家は比較的家賃が安く、かつ、得られる環境のグレードがものすごく高い。

今の家では、縁側で子どもが走り回っています。太陽を浴びるとか、それだけでも魅力的です。家の中で特に気持ちいい角部屋があるんですけど、そこから山がパノラマに見える。ここで家族と一緒に生活するのが、僕にとってはすごく大事なこと。

あとは、人ですね。さっきお話したように、絵地図をつくるプロジェクトなどもしているので、もともと塩屋の街には関わっていたんです。そのとき、「塩屋に住みたい」ってポツッと言ったら、その後すごくたくさんの人から「あそこの家空いたで。どうする?」って連絡が来るんですよ。人が濃い(笑)

— 実際住み心地はいかがですか。

山内

生活5分圏内にすべてがあるので、住み心地はめちゃめちゃ良いですね。特にこれから春なので楽しみです。ちょっと外に出ると海と山を感じる。

「見る」ことから生まれる

— 連載コミック「グレアムさんの神戸日記」はどのようにして生まれたんですか?

グレアム

30歳のときに足を骨折して、家にテレビもないので、窓から雲を見るとか、海を行く船を見るとか、そんなことしかできなくて。だからずっとこの家で、3か月くらい、漫画を描きました。それがきっかけで、その後も塩屋をテーマに漫画を描いて、ZINEもつくりました。そして、今の「神戸日記」があります。

— 漫画を読むと、いつもいろんなところを散歩されていますよね。

グレアム

観光目的では訪れないようなその土地の場所に行き、自分で見つけた人と話す。

森本

たぶん3人の共通項は、観察すること。

グレアム

まだ日本語下手だから、「見る」ようにしています。

— 「グレアムさんの神戸日記」では毎回、最後のページでその回でグレアムさんが出会った人や行ったお店のURLが紹介されています。どの場所もグレアムさんの目線で紹介されているので、行ってみたくなります。

グレアム

7年神戸住んでいる間に、すごく好きだったお店がいくつも閉まった。だから今好きなお店があるのを描けば、お客さんが来るかなって。

森本

それはいいけど、グレは漫画の連載をネットでしているのに、家ではネットつないでいないんですよ(笑)

グレアム

この家は電波が来てない。だからメールをするときは、坂の途中まで行ってします。
ずっとインターネットを使いたいなーって思ったら、友達の家に行くとか、カフェに行くとか。

— ちなみに、グレアムさんは漫画を描いていて煮詰まったりすると、塩屋の街の中でどこに行くことが多いですか。お気に入りの気分転換の場所は。

グレアム

いろいろ。山が好きなので、グッゲンハイム邸の裏から六甲全山縦走路に入ったりしてます。

小さな営みが成立する街

— 最後に、改めて塩屋というのがどういう街なのか、どういうところがおすすめかということを伺えますか。

森本

特別なことは何もない、単なる小っちゃい街。でも、だからこそ小さな営みが成立する。八百屋とか魚屋とか豆腐店とか、個人商店で成立する街って、もう少ないと思うんですよ。スーパーという概念がまだここにはない。小っちゃい場所としての魅力があって、それを住みやすいと言う人が引越してきている。

山内

商店街が小っちゃいのがいいです。大きければいいもんじゃないなと。あのサイズ感がすごくいいし、知り合いが塩屋に来たときにも、もちろん海も山も綺麗ですが、まず商店街を見せたい。

— グレアムさんは?

グレアム

駅前のお好み焼き屋さんとか。

森本

オススメのお好み焼き屋さんがあるんです。美味しいし、人が濃い。味は濃くないけど。

山内

人は濃い、味は濃くない(笑)

— 最後にネガティブな点というわけではないですけど、たとえばお金をパッと引き出そうと思っても駅前にキャッシュディスペンサーがなくて出せない。塩屋は家賃も安くて、景色も最高だけど、ちょっと不便。そこに少し不安を感じる人もいるかもしれませんが、どう思いますか?

森本

最高じゃないですか。神戸市内で、そんなことを感じられる街ももうないでしょ。旧グッゲンハイム邸のライブを観に来たけど、駅前でお金出せなくて、入場料が払えない!となっても、まあ、今度でもいいですよ(笑)。他が便利すぎるから、それが塩屋の醍醐味だと思います。