Activists

Jun 2018
Column

神戸の幼稚園・保育園事情

自然の中での園外保育が充実した園が多い

思い切って移住する大きな理由のひとつは、家族が暮らす環境をより良いものにしたいから。 だから子どもが通う園の雰囲気は言わずもがな気になるところだろう。神戸の幼稚園・保育園はどんな特徴があるのか、神戸市こども家庭局子育て支援部の上田 張方(はるみ)さんに聞いた。上田さんは、神戸市の行政9区(東灘区・灘区・中央区・兵庫区・北区・長田区・須磨区・垂水区・西区)のほとんどで保育士として勤務した経験がある。

登山を行う園が多い

――神戸の幼稚園や保育園はどんなところが特徴的だと思われますか。

基本、街中にある園が多いので、必ずしも園庭が広い園ばかりではないですが、ちょっと足を伸ばせば自然がいっぱいあるので、どこの地域でも、遠足をはじめ園外保育が充実しているところが多いんですよ。たとえば東灘区だったら保久良神社(ほくらじんじゃ)に出かけて、梅林の辺りまで登っていったり。同じ東灘区でも南方面の園に勤めていたときは、桜より少し早めの花見ができると子どもたちを連れてアーモンドの花を見に出かけました。灘区なら摩耶山に、中央区であれば布引から市ヶ原へと続く六甲のハイキングロードにみんなで行きました。

特に小学校に上がる直前の最後の遠足で “耐寒登山”を行う園もあり、そういうところでは結構な距離を登りますね。たとえば、垂水区だとJRの塩屋駅を降りればすぐ坂なのですが、そこから須磨浦の山上までずーっと登って行く。みんな「もう無理や〜」「しんどい、先生助けてぇ など、なんやかんやと言いながら全員で頑張って山上まで登って、降りてくると「やったね! と達成感を分かち合う。そうして子どもたちは卒園を迎える。そんな園も結構多いですね。

正直、先生の側からすると、自然の場所に行くのはすごく気を遣うんですよ。安全面だけで考えたら、なるべく園の敷地内だけで完結した方が無難です。でも自然の中に行かせることは、子どもの成長のうえですごく重要なことなんです。自分自身で学び取っていきますから。山登りにしても自分の力で登るということに大きな意味がある。岩を触ったり、枝を掴んだり、虫を見つけたり、そういう直接体験をすることで子どもたちは大きく成長していくと思います。

――親からすると、子どもが頼もしくなるのはやはり嬉しいことです。

思いのほか、結構な距離を登って行けますし、子どもってすごいって感じられますよ。神戸の子どもたちは小さいときから「歩く 経験が非常に豊富なのではないでしょうか。 

――園のある場所から比較的近いところに出かけていける自然があるのがいいですよね。

交通機関や車による移動を途中に多く挟むとなると、やっぱり子どもにも負担が大きくなってしまいますが、神戸は比較的どこの地区でも“ちょっと行けば着く”という距離感なので、その点でも出かけやすいです。

コンパクトさと多様性

――その他に神戸の幼稚園や保育園の環境で良いと思う点はありますか。

特別変わった何かということではありませんが、動物園や水族館が近くて行きやすいと思います。神戸は街自体がコンパクトですから比較的どこからでも行きやすいし、事実、王子動物園と須磨海浜水族園には多くの園が遠足で行っていると思います。ちなみに、王子動物園は日本で唯一、コアラとパンダがいっぺんに見られる動物園なんですよ(笑) コンパクトにいろいろなものが入っているけれども、かと言って狭苦しいわけではなく開放感があるところが、環境的な神戸の魅力だと思っています。

――コンパクトで行き来はしやすいですが、海が近い垂水区、新神戸駅からトンネルをくぐるとすぐに農村が広がる北区など、エリアのカラーが結構違いますよね。

ええ。灘区や東灘区など、東の方の地域などでは街中でも川が多いので、川遊びを取り入れる園があったり。北区と同様に農家が多い西区などでは、近隣の農家のご好意で田んぼや畑に触れさせてもらう機会がある園もあります。お祭りも地区によって違って、たとえば東灘区の方だと東灘だんじりがあって、子どもたちもよくだんじりごっこをしています。

――多様性という点で言えば、神戸は民族的にも多様です。

神戸の学校や園は多国籍が普通という認識を、先生も保護者も持っています。私が勤めた園でも保護者も子どもたちも日本語をしゃべれないことがありましたが、子どもたちは園での生活に自然と馴染んでいく。園の側もそれで苦労したことはなかったですし、子どもたちは、世の中にはいろんな価値観があるということを、自然と感じ取っていく。それは港町・神戸の歴史であり特徴でしょうね。

震災の経験に基づく防災の意識

――その他には、何かありますか。

もうひとつ、神戸ならではの特長として挙げたい点があるとすれば「防災」に対する日常的な取り組みですね。阪神淡路大震災の経験があるので、私が見てきた限り、だいたいどこの園でもいろんな想定をして積極的に取り組んでいます。また区役所、消防、警察、また各地域の「ふれまち協議会」※も連携しつつ、地域一体で避難訓練やマニュアルづくりに力を入れています。園独自で工夫を行っているところもあって、たとえば以前私がいた園では災害時に備えて、子どもひとりひとりに対して、血液型や「どんなアレルギーがあるか」などの個人データが書かれたカードをつくって備えていました。避難訓練もそれを実際に首から掛けて行ったり。危機管理意識は大体どの園も高いと思います。

※神戸市では平成2年より「ふれあいのまちづくり事業」を全市的に展開。それぞれの地域で自治会・婦人会・民生委員児童委員協議会・老人クラブ・子ども会・青少年育成協議会・PTA・ボランティアグループが中心となり「ふれあいのまちづくり協議会」(通称・ふれまち協議会)を結成、地域の福祉、環境、防災、教育等における活動を実施している。市はふれあいのまちづくり協議会が主体的に取り組むそうした活動を支援しその経費の一部を助成している。

園選び・託児に関する相談機関

――他所から引っ越してきた方たちなどは、どうやって園を選ぶ手がかりを得たらいいでしょうか。

転入してこられたらまず区役所に手続きに行くと思いますが、各区役所には「保育サービスコーディネーター」という、幼稚園・認定こども園・保育園など保育サービスの情報を教えてくれる職員が配置されていますので、それぞれのご家庭の要望や状況を伝えて相談していただければと思います。

また現在通っている保育園についての悩みや、日常的に子育てで困っていることなど、子育て全般については、各区に「神戸市地域子育て支援センター・応援プラザ」がありますので、そこで保育の専門家と話をしてみてください。

その他、神戸市の子育てに関する役立つ情報については、「ママフレ」という子育て応援情報サイトで紹介しています。たとえば一時保育を行っている保育園や病児保育施設などの情報もこのサイトを見ていただけばわかります。ちなみに神戸の病児保育施設の特徴は、すべて小児科専門医がいる医療機関に併設されていることです。現在、市内に14か所ありますが、保護者の方がもっと病児保育施設を利用しやすいように施設数を増やしていきたいと考えています。

――子育て世帯の多くが共働きなのでそうした情報も大事ですね。この度はお話をありがとうございました。

神戸市こども家庭局子育て支援部の上田 張方(はるみ)さん。

参考サイト:KOBE子育て応援団 ママフレ https://kobe-city.mamafre.jp/

取材・執筆=安田洋平 撮影=藤田 育(7点目/一般財団法人神戸観光局より提供、ポートレートを除く) 取材日=2018年3月13日